「アップデートしたかった。変わるチャンスは自分でつかむ」石原さとみ、眼差しの温度
本当に覚悟がないと
自分が壊れてしまうような役
——『ミッシング』では、これまで全く観たことがない石原さんを観ることができました。神経を削りまくった作品だと思いますが、完成してみていかがですか?
「よく生きて帰ってきたな、と自分でも思います。精神状態がおかしくなっても仕方ないくらいきつい役でしたが、家族がいたおかげで、家が安定剤のようになってくれました。特に私に子どもがいることで、演じた沙織里の心の内を知ることもできましたし、最強の安定剤になったんだと思います」
——この作品の出演は、石原さんご自身が熱望されていたそうですよね?
「そうなんです。7年前に監督に直談判したのがきっかけです」
——直談判!
「そうなんです。どうしても吉田(恵輔)監督と仕事をしたい、と思って、直接お会いして口説きまくったんですが、そのときは断られてしまって……。それから、全く音沙汰がなかったんですが、3年後に『脚本を書きました』とご連絡をいただいたのがこの作品でした」
——3年音沙汰なく、いきなり脚本が来たとなると、相当嬉しかったのでは?
「もちろん。飛び上がるほど嬉しかったですし、一読して『こういうのをやりたかった!』と思ったんですが、そもそも絶対に私にはオファーが来ない役柄だと思ったので、どうすればこの役に挑めるか、想像力をフル回転させました」
——それからさらに時間があいて撮影に入ってますよね? 準備期間だったんですか?
「いえ、私の出産を待っていただいたことや、その他にもいろいろなことが重なって時間がかかりました」
——出産を経たことで全く違う環境になっての撮影になりましたね。
「そうなんです。仕事復帰が見えてきたタイミングで脚本を読み直したら、以前に読んだときと全く違う印象になったんです。ページをめくるのがつら過ぎるし、これは本当に覚悟がないと自分が壊れちゃうと思うほど。だって、目の前にいる自分の命よりも大切な存在がいなくなっちゃうなんて、想像することはできても、どうすればいいのか全く分からないんですから。でも、吉田組にご迷惑をかけるわけにはいきませんし。クランクインするまで怖くて仕方なかったです」
photo:TISCH[MARE INC.] styling:KEIKO MIYAZAWA[WHITNEY] hair & make-up:AYA MURAKAMI model:SATOMI ISHIHARA interview & text:MASAMICHI YOSHIHIRO
otona MUSE 2024年7月号より