「自分の“好き”が自分のもとに戻ってきた感じ」市川実日子さんが過ごした、夢のような台湾2泊3日
BEHIND THE SCENES
撮影を終えたUDAさんと実日子さんへインタビュー。複数の時間を行き来するような不思議なストーリーはどのように生まれたのか? そのビハインドを少しだけ。
直感と共鳴が導いた、台湾での心解ける撮影
「撮影中からずっと楽しかったです。でも、正直に言うと、自分が映っているものの“良し悪し”ってあまり分からないんです。写真やドラマ、映画でも、撮影している最中に目に入れてしまうと、どこか距離ができてしまって。だから、モニターもあまり見ないようにしています。そのとき何が起きていたか、どういう空気が流れていたか。その瞬間の手触りを大切にしたい。きっとそれは映るんじゃないかって思います」
エドワード・ヤンの作品をきっかけに、時間をかけて少しずつ育まれていった今回の撮影。実日子さん自身の直感をUDAさんと共有し、互いの“ビリビリッとくる感覚”を呼応させながら、今回のストーリーの輪郭が浮かび上がっていった。
「2023年の夏頃、台湾で開催されていたエドワード・ヤンの回顧展の最終日に駆け込むことができて。そのときに感じた光の質感や余韻が、心のどこかにずっと残っていたんです。それが今回の撮影の入り口になりました。この連載の話をいただいたときにその回顧展で撮っていた写真をUDAさんに見てもらったら、すぐに何かをキャッチしてくださったのが分かったんです。“あ、届いた!”って」
そう語る実日子さんのまなざしは、時間を旅したあとを振り返るような柔らかさと、直感を共有し合うことができた喜びの両方を宿した、不思議な温もりを感じるものだった。
「いつもと違う場所で、いつもとはちょっと違う時間を過ごしているような感覚でした。今回の撮影を通して、みんなで創っていくファッション撮影やお茶を飲む時間など、自分の“好き”が自分のもとに戻ってきた感じがしたんです。しかも、その時間をみんなで楽しめている」
この撮影は、実日子さんにとって「人を知る旅」だったという。ホテルでのヘアメイクやチームとの会話、食事の時間。誰かと波長が合ったときの心地よさ、それが熟し、形になったことの喜び。
「“これが好き”っていう感覚のお話は、普段の撮影ではあまり声に出してこなかったのかもしれません。個人的な会話では(そういった話を)するけれど、映像の場合は役柄や作品、ファッション撮影の場合はそこにあるストーリーに矢印が向かうから。でも今回は、UDAさんをはじめスタッフのみなさんと、台湾の風景を見てごはんを食べてお茶を飲んで、いろんなお話もして、撮影をして。写真を見ると、服も“何年代?”って思うような、でも今にも繋がっている不思議なミックス感。その全てが、自分にすっとなじんでいたんですよね」
自分の匂いは自分では分からない。今回の撮影はまさにそんな感覚だったという。
「違和感がなさ過ぎて、感想が出てこないくらいでした。後になって“そうか、自分の好きが詰まっていたのか……”と、じんわり震えるような喜びが残っていて。“わたしの奥にある好き”を“いいね”って受け取ってもらえて、みんなと共有できた。それが本当に嬉しかったです。UDAさん、ありがとう」
ドレス¥224,400(ステラ マッカートニー/ステラ マッカートニー カスタマーサービス)、イヤリング[WG×PG×YG]¥528,000、リング[WG×PG×YG]¥335,500、時計〈タンク マスト〉¥522,500(全てカルティエ/カルティエ カスタマー サービスセンター)
Profile_市川実日子(いちかわ・みかこ)/『タイムレスメロディ』(2000年)で長編映画デビュー。初の主演映画『blue』(03年)で第24回モスクワ国際映画祭最優秀女優賞を、その後『シン・ゴジラ』(16年)で第40回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。その他数々の映画やドラマに出演。近年の主な出演作には映画『ルート29』(24年)、ドラマ「ホットスポット」(25年)等がある。
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direction & make-up:UDA[mekashi project]
photograph:SHUNYA ARAI[YARD]
styling:TAMAO IIDA
styling cooperation:YUKA SAKAKIBARA
hair:TOMOHIRO OHASHI[M-rep]
model:MIKAKO ICHIKAWA
interview & text:MIYU SUGIMORI
coordinate:YU TAKAHASHI[TSUBAKI SHA]
otona MUSE 2025年7月号より
EDITOR
37歳、輝く季節が始まる! ファッション、ビューティ、カルチャーや健康など大人の女性の好奇心をくすぐる情報を独自の目線で楽しくお届けします。