スタイリスト辻 直子さんに聞く!
「センスのいい顔」への最短距離は
自分を知ることと、少しの冒険心
今、私たちが欲しいのは、美しいだけでもトレンド感を盛っただけでもない、“ちょうどいいバランス”を備えたセンスを感じさせる顔。そこで“センスのいい顔”の正体と辿りつき方をスタイリスト・辻直子さんと一緒に考えました。
好きなものこそ、
新作を使って時代の空気を纏う。
「流行を追ってどんどん前に行く必要はないけれど、ずっと同じ化粧だと顔だけ時間が巻き戻されたようになるのも確か。ツヤ感が好みならグロッシーな口紅、目元に色を入れるのが好きならカラーライナーといったように、好きなものこそ新作に手を出したい。私は赤リップ好きですが、赤も常に進化しているのでアップデートはし続けています」(辻さん・以下同)
全身で、ヘアメイクする。
「つい鏡に近寄ってメイクしてしまいがちだけど、バランスはファッションも含めて“引き”で見て決めるほうがいい。パーツではなく全体像で見ると「なんか違う?」がチェックできます。ジャッジの基準は“そのバランスは自分らしいか”どうか。だからみんな違っていて当然で、何色の服には何色のメイクを、みたいなマニュアルは不要です」
センスがいいと思う人の意見を
素直に取り入れる。
「人ってありもしない外からの意見を勝手に考えて、心が惑わされることがある。そんなときこそ、“この人のセンスは間違いない”と思える人にアドバイスを求めるべき。私自身、ロングヘアから髪型を変えたほうがいいかどうか迷ったとき、絶対的に信頼できるセンスを持った人に相談して、『今のままが自分らしいんだ』と背中を押された経験が」
肌はパーソナリティ。
清潔感を削ぐもの以外は消さない。
「大人には年齢を重ねていく度に、いい意味でのアラが出る。それを厚塗りで隠してしまうと、“その人らしさ”まで隠れて“素敵”からは遠ざかる。主役はあくまでも自分です! だからファンデはちょっと足りないくらいがちょうどいい。肌の質感は残し、コンシーラーもアラをボカす程度に。お粉だって叩き過ぎないほうが自然なツヤを生かせます」
チャームポイントを伸ばせば
自分らしいバランスが生まれる。
「チャームポイントはどこなのかを突き詰めれば、自分らしいメイクの盛り方や引き方、バランスが見えてくる。例えば、アイシャドウを塗ると自分のキャラクターからずれていくような気がするのなら、別に毎日塗らなくてもいい。世の中にはいろんな綺麗があるわけだし、世間一般的ないわゆるメイクルールに縛られ過ぎる必要もないのかなと」
時には思いきって
生活からはみ出すくらいの遊びを。
「大胆にアイラインを引いたり、リップを纏ったり。なりたいと思う方向があるなら、それに対して大きく一歩踏み出すときもあったほうがいい。年齢と共に自分が高揚するようなメイクをしなくなりがちだけど、時には気持ちを張る瞬間があったほうが新たな綺麗を見つけられる。そして熱量を持ち続けること自体、センスを育むためにあってほしいこと」
いかがでしたか? 次回は、辻さん流“センスのいい顔”になるための秋の新作コスメを厳選してご紹介します。
direction & styling:NAOKO TSUJI / photograph:KEIICHIRO NAKAJIMA[SIGNO](model), KAZUTERU TAKAHASHI[KONDO OFFICE] /
hair:KAZUKI FUJIWARA[Perle management] / make-up / YUKA WASHIZU[beauty direction] / model:SERI IWAHORI, MAYUMI SADA
/ text:CHIHIRO HORIE
otonaMUSE 2022年9月号より