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よしひろまさみち

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「報道には〝作られた印象が拡散する危険性″がいつもあること」を描いた映画『セプテンバー5』。見どころをチェック!

ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ〜。

よしひろさん、「きのう何観た?」
『セプテンバー5』

story 1972年、ミュンヘン五輪選手村で、パレスチナ武装組織がイスラエル選手団を人質に籠城。そのテレビ中継を担当したのは、報道とは無縁のスポーツ番組専門のクルー達。全世界が固唾をのんで見守るなか、彼らは何を報じ、何を伝えるかの選択に迫られる。

監督:ティム・フェールバウム/出演:ピーター・サースガード、ジョン・マガロ、ベン・チャップリン、ベンジャミン・ウォーカー ほか/配給:東和ピクチャーズ/公開:2月14日より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
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★メディアにお務めの方へ★

今ひとつ話題になっていないのが納得いかんので、おかわりしてきました『セプテンバー5』。これ、もしメディアにお務めの方で見逃しているようでしたら、マジでお早めに劇場へ行って! なぜなら、これから4月くらいまで毎週のように大作やオスカー関連作が公開されるので、すぐに小さいスクリーンに移動するか終わっちゃうの!


72年のミュンヘン五輪で起きた人質テロ事件。『ミュンヘン』(05)や『ブラック・セプテンバー ミュンヘンオリンピック事件の真実』(12)などで映画になったことがある事件を、再度それを報じたメディア側の視点で描いた社会派。イスラエルとパレスチナの問題だから、今ちょっとデリケートな題材ではあるものの、その対立問題が主軸じゃないの。おそらく史上初、テロ事件を全世界にリアルタイムでカラー映像で報じた一件になるんだけど、それを担ったのがニュースや報道は専門じゃない、全米三大ネットワークのひとつABCの、スポーツ番組担当クルーだったってのがこの作品のキモ。オリンピック担当チームだからスポーツ番組のクルーとしては精鋭ぞろいだけど、人命が関わった事件のニュースはやったことないわけですよ。で、何が起きるかわからないのに、ミスは絶対できない22時間もの生中継で何をしてたかってのが問題。ファクトチェックはもちろん、警察や各部署との連携などもやったことがないわけよ。今スマホに流れてくる個人メディアの真偽不明な“ニュース”よろしく、どこで切り取ってどういう物語にするのか、報道には「作られた印象が拡散する危険性」がいつもあるってことが描かれているのね。メディア務めが長い人ほど、この映画にハマってるのはこれ。なので、早く劇場へ!

スポーツ班、てんてこ舞い

どこ切り取ろっかな〜

全世界が観てるニュース……責任重大

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よしひろまさみち/映画ライター

よしひろまさみち/映画ライター

1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。

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