2025年米アカデミー賞最多5冠!『ANORA アノーラ』で主演女優賞に輝いたマイキー・マディソンが明かす撮影秘話

2025年3月3日(日本時間)にハリウッドのドルビー・シアターで開催された映画界最大の祭典・米アカデミー賞。結果は、2月28日に日本公開された『ANORA アノーラ』が、作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の最多5冠を獲得。
主要賞候補のほとんどが原作ものや続編、伝記、スター俳優主演といったところ、この作品はオリジナル脚本、奇をてらった特殊効果ゼロ、有名俳優の出演もゼロ、と、インディー映画のセオリーを貫いた異色作。ロシア語がちょっとできるセックスワーカーの女性アニーが、客として店を訪れたロシアの大富豪の御曹司イヴァンとフォーリンラブ。契約彼女を経て電撃結婚するものの、イヴァンの両親にバレて大騒動に……というコメディです。「じつはこの作品はキャスティングされてすぐに、脚本などの制作にも関わらせてもらったんです」というのは、アニーことアノーラを演じたマイキー・マディソン。
「監督が私の出演作『スクリーム』を公開されてすぐに観に来てくれて連絡をくれたのがきっかけ。この作品のアイデアの話を教えてくれて、もしOKだったら脚本を書くし、私にもその段階から参加してほしい、と言われました。そういうコラボ作業は初めてだったけど、芝居だけでなく積極的に作品に関わることができたのは嬉しかったし、すごくいい経験になりました。そのため、リサーチしまくりでしたよ(笑)」
アニーにはロシア人の祖母がいて、ロシア語をちょっと理解できる設定。「これが一番きつくて……」と準備期間を振り返る。「第二言語っていう設定ではあるものの、自分のセリフの意味を理解できるくらいに習得しないと、と思って勉強を始めたんだけど、むちゃくちゃ難しいんですよ、ロシア語……。初めてコーチのレッスンを受けた後はへこたれて泣いたほど。でも、それからは毎日数時間はロシア語の勉強をすると決意しました。あと、セックスワーカーのコミュニティにもリサーチを重ねて、彼らに敬意を払いながらアニーのキャラクターを構築したんです」
リサーチ段階にはちょっと意外な作品も参考にしたんだとか。 「参考にして、といって監督が送ってくれたリストやDVDがあるんですが、そのほとんどが1960〜70年代の映画だったんですね。なかでも面白かったのが1972年の日本映画『女囚701号/さそり』(笑)」これでお気づきかもしれませんが、この映画、途中から無茶苦茶なアクション・コメディになるので、我慢せずに笑ってください。
『ANORA アノーラ』
story NYでストリップダンサーをしているアノーラ(M・マディソン)は、ロシアのオリガルヒ御曹司イヴァン(M・エイデルシュテイン)と出会い、1週間交際する契約を交わす。贅沢に遊びまくり、ラスベガスでは衝動的に結婚をした彼らだったが、イヴァンのお目つけ役にバレて、彼の両親が激怒し……。
監督・脚本:ショーン・ベイカー/出演:マイキー・マディソン、マーク・エイデルシュテイン、ユーリー・ボリソフ ほか/配給:ビターズ・エンド/公開:現在、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー中
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Mikey Madison
1999年3月25日、カリフォルニア州生まれ。2013年に短編映画でデビュー。ドラマ『ベター・シングス』などの出演を経て、2019年の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で注目される。カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得した本作で、ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門主演女優賞、アカデミー賞主演女優賞にノミネート。
text:MASAMICHI YOSHIHIRO
otona MUSE 2025年4月号より
WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。