ティモシー・シャラメがボブ・ディランに! 映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』は圧巻の歌唱が最高
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1961年、わずか10ドルを手にNYへやってきたボブ・ディラン(T・シャラメ)。人気シンガー、ピート・シーガー(E・ノートン)らとの出会いを経て、次第にフォークの世界で注目を集める。が、名声の高まりに疑問を抱いた彼は、65年7月25日にある決断をするのだが……。

監督:ジェームズ・マンゴールド/出演:ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、エル・ファニング、モニカ・バルバロ ほか/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/公開:2月28日より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー © 2024 Searchlight Pictures.
★ボブ・ディランをあまりご存知のない方へ★
シンガーソングライターで詩人で、ロックの殿堂でグラミー賞とアカデミー賞とピューリッツァー賞ばかりか、ノーベル文学賞をも受賞しているボブ・ディラン。フォークの神様? 時代の代弁者? あまりにもたくさんの冠言葉がついているご健在の偉人でございます。
が、あまりにも凄すぎるのに、彼の全盛期である60年代をよく知らないから、彼のこともよく分からない〜って人はたくさんいるはずなんですよ。じつはあたしもその一人。だって、80sアメリカンポップ全盛期育ちで、ボブ・ディランはUSA FOR AMERICAの特別枠だった人っていうのが最初の印象なんだもん(「BEST HIT USA」で、ことあるごとに小林克也さんがボブ・ディランの解説をしてたのはよく覚えてますが)。あたしみたいな人こそ『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』を観たら一発で「なるほど、こういうことでスターに!」と納得いくはずなんですわ。ということで、オスカー祭りが終わった今こそおかわり。
この映画で描かれているのは、ボブ・ディランのデビュー前から1965年の伝説的なライブまで。いわば初期中の初期。でも、これがいちばん大事なのよね。金も名声もない、何者でもなかった青年が、才能一つで大スターになるきっかけのお話だもの。ボブ・ディランの熱いファンからは「すでに知ってることばかり」と聞いたんですが、そりゃファンだもの。そもそもディランうんぬん以前に、60sの音楽シーンがブルースやカントリーから派生したフォークやロックという新しいジャンルの生まれた時代だってことや、平和と平等を訴える反戦運動や公民権運動が真っ盛りの時期だけに音楽はプロテスト手段だったことなどなど、彼が時代の寵児になるべくしてなったことが分かりやす〜く描かれているのは、ボブ・ディラン初心者にはとってもいい材料。そろそろ公開規模が縮小し始めるので、マジで早めに観に行って。じゃないと、おティモ圧巻の歌唱シーンもスケールダウンしちゃうわよ!
ガチでうまいんですよ、おティモの歌。
60年代NYの再現もすっごい!
青春ものとしても伝記ものとしてもよき〜
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WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。