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よしひろまさみち

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「使い捨てていい人がいるわけがない」ポン・ジュノ監督最新映画『ミッキー17』ナーシャ役の思いとは

オスカーを席巻したことで映画業界の常識を変え、英語圏以外の映画人に希望を与えた2019年の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』。あれから6年、ポン・ジュノ監督が選んだ新作は、エドワード・アシュトン原作のSF小説『ミッキー7』を映画化したハリウッド大作『ミッキー17』だ。人生どん詰まりの男ミッキーが、死んでもクローンで再生しひたすらに危険任務を遂行するというブラック仕事に就くものの、労働力を搾取する権力の理不尽に気づき反撃しようとする。この作品でロバート・パティンソン演じる主人公ミッキーの恋人ナーシャを演じたのは、ナオミ・アッキー。「ポン・ジュノ監督の作品に出られるなら、なんでもどんな役でもやりたかった」と語る。

ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』ナーシャ役のナオミ・アッキー

Naomi Ackie 1992年11月2日、イギリス生まれ。2016年の長編映画『レディ・マクベス』で注目を集め、それ以降『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』(2019年)など大作へのオファーが相次ぐ。『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』(2022年)ではホイットニー・ヒューストンを演じた。

「『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』の撮影中、監督とは何度かミーティングを重ねました。役を得たと知ったときは、 本当に嬉しくて、ハリウッドにありがちな夢物語のように感じたほど。それに、私はSFが大好きなんですよ。父の影響で『スター・トレック』シリーズの大ファンだったから。SFはストーリーの面白さはもちろん、イマジネーションとテクノロジーが融合するでしょ どこまでも知らない世界に連れて行ってくれるんですよ」

 

彼女が演じたナーシャは、ミッキーが任地で知り合い、恋に落ちる女性。彼があることをきっかけに窮地に陥ったことで、彼と運命を共にすることを決意する。

 

「ナーシャは、自由を愛する女性。それに自分のことはもちろん、他人のことも批判することがなく、いつも感情に正直。こういうキャラクターは私が一番好きなタイプなんですよ。この作品の前に撮影した映画では、ナーシャとは全く正反対の性格の役を演じていたので、この作品で自分を解放していくような気分でした。ただ、彼女ほどアグレッシブではないので、役作りのためには戦闘トレーニングを重ねないといけなかったんですよね。もちろん危険なアクションシーンはスタントですが、そういうシーンじゃなくても、柔術で黒帯を持っている強い女性だということを見せないといけなかったから」

 

作品で描かれていることはフィクションながら、労働力の使い捨てや搾取、権力の横暴など、現実世界に通じる問題は山盛り。「そのテーマについては監督やロバート・パティンソンと話し合った」という。

 

「現実世界で私たちが直面している問題をSF世界においている物語だけど、最大のテーマは“人間の価値は平等であること”なんです。使い捨てていい人がいるわけがない。ミッキーの体験を通じて、誰の命をもおろそかにするべきではないし、誰もが居場所を持っているべき。そのメッセージを強烈なインパクトで伝えることができていると思います」

ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』

『ミッキー17』
story 崖っぷち生活のミッキー(R・パティンソン)は、よく分からないままある契約を交わす。それは何度でも生まれ変わることはできるものの、使い捨ての危険任務。死ぬたびに再生される彼は、あるとき自身のクローンと遭遇してしまい……。
監督・脚本:ポン・ジュノ/出演:ロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、スティーヴン・ユァン、トニ・コレット、マーク・ラファロ ほか/配給:ワーナー・ブラザース映画/公開:現在、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー中
© 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

『ミッキー17』

text:MASAMICHI YOSHIHIRO
otona MUSE 2025年5月号より

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WRITER

よしひろまさみち/映画ライター

よしひろまさみち/映画ライター

1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。

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