アカデミー賞2冠! ミュージカル映画『エミリア・ペレス』は、サンローランの美麗な衣装とラテン音楽を堪能せよ!

ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ〜。
よしひろさん、「きのう何観た?」
『エミリア・ペレス』
story 弁護士のリタ(Z・サルダナ)は麻薬カルテルのボス・マニタス(C・S・ガスコン)から極秘の依頼を受ける。それは女性として別の人生を歩むための準備。完璧な計画を立てたリタのおかげで、マニタスはエミリア・ペレスとなって過去を捨てるのだが……。
監督:ジャック・オディアール/出演:カルラ・ソフィア・ガスコン、ゾーイ・サルダナ、セレーナ・ゴメス ほか/制作:サンローラン プロダクション byアンソニー・ヴァカレロ/配給:ギャガ/公開:現在、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国ロードショー公開中 © 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHE FILMS - FRANCE 2 CINEMA COPYRIGHT PHOTO : © Shanna Besson
★おしゃれ好きな方(すなわちミューズ読者全員)へ★
これ、ミュージカルって聞いてない!! と、鑑賞した友人からリアクションをいただきました『エミリア・ペレス』(そうだった、それ言い忘れた……)。あらすじやビジュアルからは想像つかないと思いますが、きっちりミュージカル。しかも、ラテンポップです。その艶っぽい音楽は当然のことながら超いいんですが、それにあわせた衣装もムキー!ってくらいに素敵なの。
というのも、この映画、サンローランのクリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロが率いる映画製作会社サンローラン プロダクションの作品。ペドロ・アルモドバルの短編『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』からスタートし、本作やデヴィッド・クローネンバーグなどの長編を製作しておりましてな。そのどれもに衣装提供……。って、こういうパターンだと、ドドーンとロゴの入った衣装や小物が劇中で出てきたり、リアル社会では映画に出てきた衣装をもとにカプセルコレクションを発表したりするもんだけど、そういうのが全くないのも特徴(個人的にはほしいけど)。
あ、物語もすごいんですよ。メキシコの麻薬カルテルのボスがじつは幼いころから性別違和で悩んでいて、今の状況を全て捨てて新しく女性としての人生を歩むために、若い女性弁護士を雇って……と、ほんっと無茶苦茶。無茶苦茶過ぎてメキシコをはじめとするラテンアメリカの国々では大ブーイングだったんですが(これほんと)、フィクションのミュージカルとしては超面白い。ブーイング問題によって、現実社会の状況を取り入れたフィクションをどこまで許すかっていう大テーマまで生まれた問題作でございます。
中央のゴメつぁんが可愛いのなんの(役柄はかなりきっついんですが)
ゾーイ・サルダナ、オスカーおめ!
WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。