デミ・ムーアが老化への恐怖に挑む! 5月16日公開の話題の映画『サブスタンス』は必見です

あのデミ・ムーアが初めて映画賞の話題の中心に。『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)でのブレイクから35年、ゴールデングローブ賞の受賞スピーチでは「30年前、私はプロデューサーにポップコーン女優(大して深い意味のない作品に出る女優)だと言われ、このような賞を獲るのは許されないのだと思っていました」と告白した彼女は、オスカーこそ逃すも、全米映画俳優組合賞主演女優賞も獲得。その作品『サブスタンス』での彼女には、捨て身の芝居で圧倒される。ルックスで売れていた俳優が、老いて人気を失い、危険な再生医療に手を出す……という物語。

Demi Moore 1962年11月11日、アメリカ・ ニューメキシコ州生まれ。1985年の大ヒッ ト作『セント・エルモス・ファイアー』などで注目を浴び『ゴースト/ニューヨークの幻』 (90)で大ブレイク。以降、数々のヒット作に出演してきた大ベテラン。久々の主演作である本作で、キャリア初の映画賞である ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュー ジカル・コメディ部門)を獲得。
「脚本を読んだとき、このテーマを掘り下げるには最恐の方法だから、私自身も怖くなるほどだと確信していました。単なる老化への恐怖だけでなく、それによって自分自身の心身を痛めつけるという考え方に対して問題提起をすることができる、とも。もちろんそれができる自信はなかったけど、精一杯取り組んでみる価値があると思ったんです」
彼女が演じたエリザベスは“サブスタンス” によって、もうひとりの若い自分スーに分裂。片方がアクティブなときは、もう一方は休眠状態となり、別人として過ごすことができるが、アクティブの時間制限を守らねばならない。
「スーを演じたマーガレット・クアリーとは、役の上でも別々の人格だけどひとりのキャラクター、という変わった経験を共有しました。とても親しくなったけど、不思議なことに撮影現場ではあまり会話をする必要がなかったんです。おそらく彼女とは完全に信頼し合う仲になれたから、お互いに過度に分析する必要がなかったんでしょうね」
ルッキズムにまつわる見た目の維持への固執。「誰でもいずれは年を重ね、見た目は変わっていくのに、無言の合意のような圧力を感じることはたくさんあった」という彼女は、美醜よりももっと大きな問題があると考えている。
「老いると脇に追いやられる、価値が下がる。全ての人がそう考えているわけではないのに、集団意識ではそれが共有されてるんですよ。それが一番の問題。この作品に取り組む際、私は個人的なレベルで、見た目や老化に対する基準がどこにあるのかということを繰り返し自問自答してきました。現実的ではない基準を自分に押しつけて、固定観念に縛られていないか、と。それによって、次第に自分に自信を持ち、あらゆることから解放されていった気がしています」
『サブスタンス』
story_かつての大女優エリザベス(D・ムーア)は、50歳を迎えて最後のレギュラー番組降板で崖っぷちに。そんなとき、怪しげな再生医療の誘いに乗り、“サブスタンス”という医療キットの注射をする。瞬く間に彼女の細胞は分裂を始め、破れた背中から若く美しいもうひとりの彼女“スー”(M・クアリー)が……。

監督・脚本:コラリー・ファルジャ/出演:デミ・ムーア、マーガレッ ト・クアリー、デニス・クエイド ほか/配給:ギャガ/公開:5月16日より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
© The Match Factory
text:MASAMICHI YOSHIHIRO
otona MUSE 2025年6月号より
WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。