ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソンを
演じるアルマ・ポウスティが語る撮影秘話
人気映画ライターよしひろまさみちさんが、今注目するシネマミューズとは? 今月は10月1日より公開中の映画『TOVE/トーベ』でムーミンの生みの親である作者トーベ・ヤンソンを演じているアルマ・ポウスティをクローズアップ。
ムーミンの生みの親、知られざる半生
みんな大好きムーミン谷の仲間達! でも、彼らの生みの親である作者トーベ・ヤンソンのことって、名前は知っていてもどういう人柄だったかを知ってる人は少ないわよね? 彼女の人生のなかでもっとも重要な時期を切り取った伝記映画『TOVE/トーベ』では、ムーミン達に込められたトーベの思いが描かれています。
「トーベ・ヤンソンに関するリサーチをしたところ、本当にたくさん知らないことがあったんですよ」と語るのは、本作でトーベを演じたアルマ・ポウスティ。
「当時彼女のことを調べていて分かったのは、自分に対してめちゃくちゃ厳しい人だった、ってこと。彼女はアーティストだし、作風も自由で、ボヘミアン的な享楽主義の人だとばかり思っていたんだけど、実際はまるで正反対。これに一番驚き、彼女が一番苦悩した時期が本作で描かれている重要性に気づきました」
劇中では、トーベがアーティストとしての方向性で苦悩し、そっとムーミンの絵を描くシーンも。「役作りでムーミンを描くのは上達したと思うわ(笑)」とな。「日本の皆さんもムーミン好きだって聞いてますよ。フィンランドでは当たり前のように、誰にでもムーミンとの思い出があるほど。もちろん私も小さいころに絵本をよく読んでいた‥‥けど、絵本を噛んでたみたいでボロボロにしたのよね(笑)。じつは私の祖父母がトーベ本人と友人だったこともあって、遠い親戚のような気持ちなんです」
そんなトーベとは切っても切れないアルマさん、本作の撮影でさらにそのつながりを感じたそう。「トーベの親戚の話を聞いたり、アトリエを見学したり、彼女がよく散歩していた道のりを歩いてみたりすることで、彼女の内なる世界をさらに深められた気がするのよね。この経験をしたことで、私の仕事に対する向き合い方にも大きく影響していると思います」
『TOVE/トーベ』
現在Bunkamura ル・シネマほかにて公開中
story 第二次世界大戦中に防空壕の中でおびえる子どもたちに語った物語からムーミンの世界を生み出したトーベ(A・ポウスティ)。戦後、彼女は表現の追求をするうちに、美術界の潮流と自分がずれていることに気づき‥‥。
text : MASAMICHI YOSHIHIRO / photo : KIRA SCHRODER