CULTURE

よしひろまさみち

レンタルビデオ店ライブラリの数奇な運命を追う、どうかしてるドキュメンタリー『キムズビデオ』

★レンタルビデオ、借りてた方へ★

レンタルビデオ、借りてた世代〜(はーい!)。というか、あたしはかつてレンタルビデオの業界誌編集をしていただけに思い入れは強いんですよ、レンタル業界。そこまででなくても、DVDになってからもレンタルを利用していた人は多いはず。そんな人にご覧いただきたいのが、『キムズビデオ』ってドキュメンタリー。閉店したレンタルビデオ店のコレクションが、まさかの場所に眠っていたっていう、思いもよらぬ実話です。


キムズビデオは行ったことありますの。初めてNYに遊びに行った1999年。ちょうど『マトリックス』が劇場公開されていたときなので、レンタル業界は活況だし、DVDも普及前夜。なので、NYでビデオ屋といえば、キムズビデオすごいよ、と言われたもんです(もちろん大手のブロックバスターはあちこちにありましたが)。レンタルだから店内を見るだけで我慢でしたけどね。

 

で、この映画のタイトルの懐かしさもあって観てびっくり。超大量かつ世界中のカルト映画がそろっていたコレクションが、まだ存在していたとは。しかもですよ、なぜかシチリア。その理由が最初に明かされて、イタリアとの交渉からコレクションの移管がされてめでたし……ではなかったのが、この映画のすごいリサーチ。村の文化発展のためにシチリアに寄贈したはずのビデオが、最悪の保存状態で放置されてたのよ。で、そのサレーミ村に乗り込んで実情を知ってしまった元会員が、情報を集めていくなかでビデオを取り戻そうとするサスペンスストーリーに。これがすごいお話でしてな。特にキムさん本人が出てきてからのエピソードは、政治家やマフィアまでからんでいて、「マジですか?」ってくらい強烈。いやー、フェイクドキュメンタリーだったとしてもおもしろいわ(フェイクじゃないので、さらにおもしろく怖いんだけど)。


レンタルビデオにお世話になったという方、ぜひとも自分が借りていたビデオ屋さんのアーカイブがどうなったか思いを馳せてみて〜。

キムさん、状況を見て絶句

VHSだけじゃなくDVDもあるよ

ほぼ犯罪の持ち出し劇

『キムズビデオ』公式

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よしひろまさみち/映画ライター

よしひろまさみち/映画ライター

1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。

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