ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ~。
『スワンソング』
監督:トッド・スティーブンス/出演:ウド・キアー、ジェニファー・クーリッジ、マイケル・ユーリー、リンダ・エヴァンス ほか/配給:カルチュア・パブリッシャーズ/公開:現在、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー中(105分)©2021 Swan Song Film LLC
★「人生のピーク」を既に迎えてしまった方へ★
とんでもねーおすすめの仕方ですが、マジでこの映画はそういう人にこそ観ていただきたいのですよ。それが『スワンソング』。人生のピークが若かりしころにあって、そのときにしでかした親友とのいざこざがそのまま残っちゃって、おまけにそれを解消するチャンスを失っちゃったっていう人。この作品の主人公パットはそういうおじいさんゲイです。
老人介護施設でひとり寂しく過ごしていたパットが、かつての親友の死に化粧のために徒歩旅に出るっていう作品。その道中で回想劇がいくつか挿入されるんだけど、それがまーエモいのなんの。人生のピークっていうか、超華やかで大成功している時期って、見えないものがたくさんあるのよね。それを振り返りながら、ちょっとずつ理解していくっていうくだりは、老いてなくても刺さる。マジで刺さる。っていうか、ピークってどこにあったん? っていうあたしでも刺さった。
新旧ゲイカルチャーもたんまり出てくるし、笑えるところもたくさん仕込んであるんだけど、鑑賞後の感覚は心に秋風がシュッと吹いてくる感じ。抽象的だけど、マジでこの感覚なのよ~。物寂しいっていうか、あぁ元気なうちに会いたいと思ってる人には会って話したほうがいいのよね、とか。もちろん人生のピークを謳歌している方が観ても、この感覚はちょっとわかってもらえると思うの。でも、人生後悔したくないわ、っていう辛酸なめた方のほうがグサッとくると思うので、ぜひとも観て~。もうすぐ終わっちゃうから!
施設の外は以前のきらびやかライフを知る人たちも
パットは街の人気者(過去形)
過去のわだかまり、残しちゃダメよ