【ネタバレあり】「入れ替わってる⁉」からの他人の体で生きる悲哀。映画『君の顔では泣けない』は感涙必至
「入れ替わってる⁉」からの「他人のからだで人生を過ごしている」という悲哀。

『君の顔では泣けない』製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ/公開:11月14日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー ©2025「君の顔では泣けない」製作委員会
『君の顔では泣けない』は、入れ替わって15年が経った同級生・坂平(芳根京子)と水村(髙橋海人)が喫茶店で再会し、これまでのおたがいの歩みを振り返る形で進行していく(あえて設定を説明せず、30歳になった坂平と水村の近況トークの中で口調や一人称、仕草から徐々に入れ替わっていることがわかるという構成&演出と芳根&髙橋のさりげない芝居が絶妙!)。
高校1年生の夏、プールに落ちたことをきっかけに心とからだが入れ替わってしまった2人。元に戻る方法を探しつつ、とりあえずは周囲を混乱させないためにおたがいを演じて日常生活を送ろうとする……というのが、時系列順に並べた際の冒頭部分。これは懐かしの名作『転校生』から大ヒットアニメ『君の名は。』まで、青春“入れ替わり”映画の王道パターンといえる。『君の顔では泣けない』もそのフォーマットを踏襲していくのかと思いきや――全く違った展開になっていくのが驚きだ。
まず、2人はいつになっても元に戻れない。そして、入れ替わった状態が“普通”になっていき、15年が経ったとき「戻れるかもしれない」可能性がついに見つかり、2人の胸中は激しく揺れる。ここまで懸命に歩んできて、手に入れた仕事も家族も生活もある。予想外の連続だが、充実感だって抱いてはいる。もちろん、この生活は本来、他人のものだ。だが果たしていま、本当に元のからだに戻りたいのか? と……。そう、本作は“入れ替わり”というファンタジーに見せかけて「自分とは何なのか」「幸せとは?」を模索する、非常にリアルな話なのだ。「今の俺たちが戻りたいと思うのって、身勝手なんじゃないかな」「自分の本当の姿を取り戻すことの、何が悪いの?」という両者の本音の衝突が、痛みとともに突き刺さってくる。
text_SYO
WRITER










