【ネタバレあり】「入れ替わってる⁉」からの他人の体で生きる悲哀。映画『君の顔では泣けない』は感涙必至

『君の顔では泣けない』製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ/公開:11月14日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー ©2025「君の顔では泣けない」製作委員会
そこに効いてくるのが、15歳から30歳の間に人々が経験するであろう、ライフイベントの数々。大学受験、就職、結婚、妊娠&出産&育児、親との死別といった人生の一大事の数々を、坂平と水村は自分のからだで経験できない。
「小さいころの夢って、結婚することだったの。だけど、それは無理なんだなって。そしたら自分のからだがどんどん嫌いになっていって」と水村(からだは坂平=男性)が葛藤を吐露し、「私は大丈夫」と自己暗示をかけようと必死にもがいてきた苦悩を明かすシーンや、妊娠した坂平(からだは水村=女性)が「自分が自分じゃないみたい」とつぶやくシーン、さらに入れ替わった相手が本人以上に両親と良好な関係を築き、まるで本当の家族のようになっている姿を見てショックを受ける姿、親の死に直面し悲嘆にくれるも、他人のからだのため人前では大っぴらに泣けず、「いいよなお前は。遠慮なく泣けて」と八つ当たりしてしまう場面などなど、実際に同じ経験はしていないにもかかわらず「わかる」と思わせてしまう強固な説得力が、『君の顔では泣けない』には存分に宿っている。
本来だったら違和感だらけの状況を一切そう思わせず、共感を超えた感涙という高みにまで持っていった芳根京子と髙橋海人の名演も含めて、見逃すには惜しい一作。ぜひ自分自身の“心”と重ね合わせながら、2人が辿った15年間を疑似体験していただきたい。

『君の顔では泣けない』製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ/公開:11月14日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー ©2025「君の顔では泣けない」製作委員会
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