ドレス好きミューズ必見! 今月のシネマミューズは、11/18公開映画『ミセス・ハリス、パリへ行く』で主演したレスリー・マンヴィル
50年代ディオール
のオートクチュールがずら〜り!
90年代にテレビシリーズにもなった、1958年に出版された小説『ハリスおばさんパリへ行く』。戦争未亡人になり、家政婦として暮らすエイダ・ハリスが、勤め先の裕福な家にあったクリスチャン ディオールのドレスに一目惚れ。必死にお金を稼ぎ、パリのディオールに突撃! という物語。1着の高級ドレス、されど超絶素敵でひと目で胸ズキュンって経験、あるでしょ〜? その乙女心と庶民心、どっちも経験したことがある人ならば、これの映画化『ミセス・ハリス、パリへ行く』はドンズバで惚れ込んじゃうはず。
「彼女は、とてもパワフルなのよ。ドレスは実現不可能だと思えることをやり遂げることができるという事実を象徴している。夫の死を乗り越えて、自らの運命を決定するひとりの女性として立ち上がることを表しているの。上流階級ぶった横柄な態度を打ち砕き、誰もが大切な存在であることを証明した。人に勇気を与える素晴らしい物語よ」というのは、ハリスを演じたレスリー・マンヴィル。いや、マジでドレスがきっかけで、人の心ってザワザワと動き始めちゃうのよね。
なにせこの映画、50年代当時のオートクチュールが第二の主役。それだけに、ディオールの協力は不可欠。なんとクリスチャン ディオールクチュールのコミュニケーション最高責任者であるオリヴィエ・ビアロボスが貴重な協力者になり、当時のデザイン画やアーカイブコレクション、ジュエリーや帽子などの小物の提供はもちろん、1957年当時のメゾン ディオールの再現セットのために、建物の設計図や家具の提供までも取りつけてるの。
最大の見どころは、ハリスがラッキーにも潜入してしまったディオールのファッションショーのシーン。上顧客だけが招かれたメゾンの中でモデルが順に歩き、顧客は気に入ったドレスをメモし、「ツケ」で発注するという当時のオートクチュールのシステムをありありと再現。これ、他の映画ではほとんど描かれたことがないのよねー。上流階級の贅沢が、労働者への無茶振りによって支えられていたっていう歴史。そこにまで切り込んで、ドレスに誘惑を描いた本作。女子ならマストで観なきゃダメ。
『ミセス・ハリス、パリへ行く』
text:MASAMICHI YOSHIHIRO
photo:©︎2022 FOCUS FEATURES LLC.