CULTURE

よしひろまさみち

日本語・クルド語・手話がクロスする傑作コメディ『みんな、おしゃべり!』は絶対に観て!

★言葉の壁は心の壁、と思い込んでいる方へ★

言葉が通じないと不安〜。そりゃ誰だってそうですよ。でも、言葉があるなら言語は違ってもコミュニケーションがとれるし、なんなら一生もんのパートナーになる可能性だってあるの。それをものすっごい斜め上から描いたコメディ映画が『みんな、おしゃべり!』。日本が舞台なので、メインは日本語ですが、日本手話、クルド語、そして新語(!?)まで出てきて、コミュニケーションの大切さを描いている傑作です。


電器店の店主・和彦はデフで、娘の夏海は聞こえる人。よって、日頃から父の手話通訳をしているのね。で、ハプニング。近所で暮らすクルド人コミュニティと手話をメインにするデフコミュニティを、行政が主体となったメディアが取り上げることになったことをきっかけに、普段から抱えていた不満が爆発。間に立つのは日本語と手話ができる夏海と、クルド語やトルコ語ができる日本育ちのヒワ。通訳にも限界があるし、なんなら夏海とヒワの通訳スタンスが違うもんだから、そこでも衝突が。おまけに、夏海の弟は、頑なにしゃべろうとしなくなり、友達同士でしか通じない言葉遊びを始めるし、この騒動どこに向かうの! ってお話。

 

言語違いで生まれる衝突はヒリヒリするんだけど、「いやこれ……共通言語があったらこうはならんだろ」というすれ違いばかり。それを通訳する夏海とヒワも、「言ったことそのまま訳す派」と「忖度と省略をして訳す派」で分かれて、通訳するスタンスと技量の差も考えさせられるんですね。そしてそんな諍いがいやだったのか、新語を作ってしまった夏海の弟が一番正しいのかも……とも思えたり。いや、これって正解がないのよ! 言葉を介したコミュニケーションは、シチュエーションによって左右されるし、ちょっとしたすれ違いをスルーできることもあれば、果ては戦争っていうこともあることを、すっごくミニマムに、しかも笑いを交えて描いているの。こんな軽やかに世界中に転がってる大問題を描いた作品、観たことない。見る人それぞれに自分のシチュエーションで考えさせられるはずだから、絶対に観て。配信は予定なしなのよ!

この言い争い、割って入るべきかしら……という顔の夏海とヒワ。

落書きに見えますが、じつは……。

『みんな、おしゃべり!』公式

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よしひろまさみち/映画ライター

よしひろまさみち/映画ライター

1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。

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