【ネタバレあり解説】二次元以上!? Netflix映画『10DANCE』見どころは「ジェンダーロールの崩壊」
ふたつめ。2次元のイメージ以上

コミックが原作の実写映画にはつきもののジレンマ。原作のイメージを崩さない、もしくは超えてくるものが求められますよね。ただ、元は2次元すよ。現実にはいるはずがない人物じゃないですか。おまけに『10DANCE』の場合、ダンスシークエンスは文字通り絵に描いたような美しさと流麗さ、それに実写ならではのアクションとカメラワークがないとダメ。それがですよ、どれもクリアしちゃったんだなー、これ。まずルック。文句なしですよ……。特に町田さんと竹内さん、マジでコミックから抜け出たというよりも、原作以上。見た目のこととやかく言うのは無粋だと理解したうえでも、美術品のように整ったお顔とおからだと姿勢はほぼ国宝級(あの映画にもありましよね……「んまぁ、きれいなお顔」ってシーン)。個人的には『有閑倶楽部』を彼らでリメイクしてほしい(関係ない)。


ダンスですが、ボールルームでの競技シーンでのカメラワークは、さすが『るろうに剣心』の監督だわ~……と惚れ惚れ。そうなんです、アクション映画ばりなんですよ。ジャイブではキレッキレの躍動感でダンス分からないあたしでもあっと驚いたもの。ちなみに監督曰く「(町田さんは)ルックスも含め“日本のトニー・レオン”というイメージ」といってますが、あたし的には『エム・バタフライ』時代のジョン・ローンだと思いましてよ(古いお話ですみません)。

そして、ダンス指導を担当した西尾浩一さん、下田藍さん(ボールルーム)、高木隆さんと高嶋聖美さん(ラテン)のインタビューを読みますと、俳優陣がどんだけリアルな競技ダンスアスリートに近づくかの苦労が分かるんですね。ちょいと抜粋。
「俳優のみなさんの練習に入る時期はそれぞれ違いましたが、基礎練習と姿勢や強化練習から始めていただいて、みなさん約半年から1年ほどかけて練習をされました。ペアで踊るには、それぞれがまずある程度のレベルに到達する必要があるので、最初の2カ月ぐらいは各自1人の練習でした。その後、撮影で踊るステップの練習を繰り返すのですが、なかでも町田さんは、ブラックプールの帝王と呼ばれるダンスを披露しなくてはならないですし、漫画でも特徴的に描かれている“帝王ホールド”を魅せる必要があったので大変だったと思います。(中略)撮影1カ月前から撮影中は、ほぼ毎日数時間レッスンしました」(下田さん)
「4人のなかで竹内さんはダンス経験がなかったのですが、サッカーをやっていたそうで運動神経は抜群、体幹がありましたね。とても努力家です。基礎練をしていると撮影スタッフが『いつから踊るんですか?』と心配するほど、地道に基礎練習を続けていました。それが功を奏して、撮影で踊るすべてのステップに対して時間をかけずに当てはめられるようになって(後略)」(高木さん)
アクションっぽく見えるのは、男性2人によるダンスってのもありまして。「男性同士で踊ることのいい点としては、同じパワーで踊れる気持ちよさがあるんですよね。実際、竹内さんも町田さんも相手が男性だと遠慮なくフルパワー出せる、とても気持ちがいいとおっしゃっていて。私が『リアル10ダンス』のイベントに関わらせていただいたとき、(パートナーの)高木が男性ダンサーと踊っているのを見て、嫉妬するぐらい素敵に踊っていたことを思い出しました」(高嶋さん)

text_MASAMICHI YOSHIHIRO
WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。











