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よしひろまさみち

【ネタバレあり解説】二次元以上!? Netflix映画『10DANCE』見どころは「ジェンダーロールの崩壊」

みっつめ。これ一番重要。惹かれ合いが自然!

原作は「このBLがやばい!2019」受賞作なので、ボーイズラブのど真ん中にあると断言できるんですが、この映画版はどうかというと、日本BLというよりは、海外のブロマンスのほうかな……(BLっていうには2人の関係性が同等過ぎるし、2人ともゲイじゃないし、セクシュアリティの目覚めもないし)。才能に惚れ込みあった2人のシーソーゲームなんですよね。たしかに唐突ですよ、あの地下鉄のシーンは。ウォン・カーウァイの長回しか! ってくらいの尺をとりながらも、「もっと見せて!」と思わせてくれた奇跡のキスシーン。でも、それは結ばれちゃった証拠ですし、スパイスなんですよね~。

 

それよりも、惹かれ合いつつも、まだ反発心がある前半の描写がすんばらしい。たとえば、杉木が鈴木をリードしてワルツを踊るシーン。ここに至るまでの相互反発やら伏線ともいえる妙に艶めかしいカウントなどがあったにせよ、ホールドされた鈴木の表情、そして“支配してやったり”な表情で「お姫様になれましたか?」という杉木。完全に2次元じゃん、メロつくわ、こんなん。


超奔放に色恋をエンジョイしてきて、それがラテンダンスの色香に反映している鈴木と、日ごろの立ち居振る舞いからジェントルマンとして仕込まれ、ちょっとの乱れも許さない厳格さを持つ杉木。じつは2人ともダンスにおけるジェンダーロール沼……男はリード、女はフォローと思い込んでいて、ひいてはマチズモにとらわれているんですね。それを証拠に、杉木はパートナーの矢上を部下扱いしてるし、ラテンダンスは愛と情熱という鈴木もパートナーの田嶋から何か言われても否定から入るし。チャンピオンであるがゆえに、ジェンダーロールも厳格だし、チャンピオンとして決められたレールに乗っていることすら気づけていないんです。


それが崩れる瞬間が、同性のパートナーとの切磋琢磨によって現れ惹かれ合っちゃう……これが最大の見どころ。おたがいを鏡のように映しあって、今まで見えてなかったマチズモ&余計なプライドが丸見え。そして気づいちゃう。おたがいに“男だからじゃなくて彼が好きなんだ”って。

以上、勝手ながらの10DANCE解説でした! 年末年始、おかわりしよっと。

Netflix映画『10DANCE』
story 競技ダンスのラテン部門で日本チャンピオン鈴木(竹内涼真)とスタンダード部門の日本チャンピオン杉木(町田啓太)は部門が違うもののお互いを意識し合う関係。ある日、鈴木は杉木から両部門の全10種目で競う10ダンスの大会で、共に頂点を目指そうと誘われ、合同練習に挑むのだが……。
監督:大友啓史/出演:竹内涼真、町田啓太、土居志央梨、石井杏奈、前田旺志郎 ほか/配信:現在、Netflixにて独占配信中
© Netflix

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  • 【ネタバレあり解説】二次元以上!? Netflix映画『10DANCE』見どころは「ジェンダーロールの崩壊」
  • Netflix映画 『10DANCE』12月18日(木)より独占配信中
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  • Netflix映画『10DANCE』 story 競技ダンスのラテン部門で日本チャンピオン鈴木(竹内涼真)とスタンダード部門の日本チャンピオン杉木(町田啓太)は部門が違うもののお互いを意識し合う関係。ある日、鈴木は杉木から両部門の全10種目で競う10ダンスの大会で、共に頂点を目指そうと誘われ、合同練習に挑むのだが……。 監督:大友啓史/出演:竹内涼真、町田啓太、土居志央梨、石井杏奈、前田旺志郎 ほか/配信:現在、Netflixにて独占配信中 © Netflix

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よしひろまさみち/映画ライター

よしひろまさみち/映画ライター

1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。

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