Netflix史上最大級のラブストーリーがついに始まる! 11月24日配信スタート『First Love 初恋』が見逃せない
のめり込めるラブストーリーを探している皆さんへ。
連続ドラマの“強み”とはなんだろう?
ひとつは、映画のように2時間に収めることなくじっくり物語や人物を描けることだろうが、視聴者においては「長い期間楽しめる」ことにあるのではないか。地上波のドラマであれば1クール=約3カ月の間、毎週この時間に新しいエピソードが更新されるという“予定”が自分の生活に組み込まれる幸せ――週刊連載の漫画を追いかける感覚にも近いそれは、私たちの日々に彩りを与えてくれる。
その根本にあるのは、「続きが気になる」という感情だろう。登場人物の今後や物語がここからどう転がっていくのかを「知りたい」という渇望を抱かせてくれる作品であればこそ、こちらも追いかけたくなるというもの。であれば、もし仮に“一気見”が可能だったら……? それだけ気になる物語だったら、観賞欲に引っ張られて全話観賞してしまうはず。「あぁもうこんな時間、でも観たい!」「もったいない、でも再生してしまう……」という我欲に完全に負けてしまう引力を持つ作品――11月24日より配信開始されるNetflixシリーズ『First Love 初恋』は、さながら3カ月分の楽しみが圧縮されたドラマといっていいだろう。
本作は、宇多田ヒカルの名曲『First Love』『初恋』にインスパイアされたラブストーリー。満島ひかりと佐藤健がダブル主演を務め、90年代から現代における約20年を舞台に、切ない運命に翻弄される男女の悲恋を全9話構成で描き出す。
2018年の北海道・札幌。タクシードライバーの也英(満島ひかり)と、セキュリティ会社で警備員として働く晴道(佐藤健)。高校時代に付き合い始めたふたりは、なぜ別々の道を歩むことになったのか? 運命的な再会を機に両者の抱える“秘密”が、過去と現在を行き来する形で紐解かれてゆく。
Netflixの新作ラインナップの中でも大いに期待を寄せられている話題作であり、配信開始日を待ちわびている視聴者も数多い本作。その魅力はキャスト陣の繊細かつハイクオリティな演技、寒竹ゆり監督のこだわり抜いた映像美、キーとなるシーンで流れる宇多田ヒカルの名曲などいくつもあるのだが、やはり先に述べた「続きが気になってしょうがない」仕掛けの数々が非常に効いている。ただのストレートなラブストーリーとはまるで違う作りになっているのだ。
互いに初恋相手で、ずっと一緒にいると誓った也英と晴道。高校卒業後、キャビンアテンダントを目指す大学生と自衛官という道を選んだふたりは、遠距離恋愛に苦しみながらも互いの夢のために支え合っていた(スマホもSNSもない時代だからこそ、距離がふたりを遠ざける切なさが引き立つ)。也英と晴道の健気な姿を観るほど、「それなのにどうして別れてしまったのか?」という疑問が浮かぶことだろう。
幸せ絶頂の恋人たちに何があったのか? そんなことを考えているうち、現代パートで也英と晴道は再会。思わず晴道は涙を流すが、也英はどこか他人行儀で様子がおかしい……。視聴者が「え、どういうこと⁉」と困惑し、「いまのシーンってひょっとして……」と考察がはかどるミステリー仕立ての描写がいくつもあり、さらに後から観るとわかる第1話の冒頭から仕込まれた伏線が絡み、加えて予想外のシーンや新たな人物の登場など、「こんな気になるところで終わるの?」という毎話のラストの“引き”が衝撃的すぎて「これは観るしかない!」状態に陥ってしまう。
そして真相が明かされてからは、すれ違う也英と晴道の切ないドラマに魅了され「幸せになってほしい」と祈るような気持ちで観て、最終話のサプライズで「えっそんなことが!?」とびっくりしつつも泣かされてしまうという、最後の最後まで視聴者を引き付けて離さないばかりか、毎話切なさと驚きで情緒がおかしくなるような作品に仕上がっている。しかも配色やロケーションから衣装に小道具に至るまでとにかくお洒落で、満島と佐藤の涙を引きずり出すような熱演(也英と晴道の若き日を演じた八木莉可子、木戸大聖の躍動、夏帆や濱田岳演じるキャラクターも魅力的だ)も素晴らしく、満足度が非常に高い。
余談だが、Netflixのドラマの場合、テレビドラマとの大きな違いは分数に縛りがないこと。『First Love 初恋』も各話大体50分前後だが、クライマックスの8・9話は1時間超えのボリュームとなっており、作り手・視聴者共に最も気持ちのいいところで各話が締められるというのもクオリティに寄与している。
余計な前情報を入れずに楽しんでいただきたいため、具体例をほとんど挙げられないのが恐縮だが……。『First Love 初恋』はきっと今後もドラマ好きの間で語られていくであろう一作。一気見してしまう危険性が非常に高いため、ぜひ時間をしっかり確保したうえで楽しんでいただきたい。
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SYO
1987年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、複数のメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、エンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。トークイベント・映画情報番組への出演も行う。