「悲劇的ロマンスの原因を描きたかった」再映画化『嵐が丘』監督エメラルド・フェネルが語る

不朽の恋愛文学『嵐が丘』。7度映画化されたほか、宝塚歌劇団による舞台版をはじめ、数々の派生作品を生み出してきた傑作中の傑作を、『プロミシング・ヤング・ウーマン』の監督・脚本を務めたエメラルド・フェネルが再映画化しました。

Emerald Fennell 1985年10月1日、ロンドン生まれ。大学在学中にエージェントと契約を交わし、2007年に俳優デビュー。TV、映画で俳優活動の一方で執筆活動も活発に行い、BBCのシリーズ『キリング・イヴ』第2シーズンのヘッドライターとしても活躍。製作・監督・脚本・出演を務めた『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020年)が第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞を含む5部門で候補入りを果たし、脚本賞を受賞した。
「14歳のとき、初めて読んで夢中になって以来、たびたび読んでいたけど、読むときによって感じ取れるものが変わっていくのが素晴らしい」と監督。「もちろんこれまでの映画版は全部観ていて、全て素晴らしいと思ったわ。それにこの作品をモチーフにした美術品もたくさん観て、インスピレーションをもらいました。でも、今回の映画化で大事なところは、悲劇的ロマンスの原因を描くこと。そのため、子ども時代の主人公たちから、少し成長して青年になったときの彼らを見せることで、マーゴットが演じたキャサリンがどれだけ厳しい状況に置かれているかを描きたかったんです」
キャサリンは荒野の没落した旧家で、アルコールとギャンブルで身を持ち崩した父に怯えながら育ち、養子となった孤児ヒースクリフとそのつらさをシェアしています。この抑圧の描写が新視点。そして、他のどの映画版よりもエロティック。「暴力と性についてを真っ向から描くことは、19世紀の女性が置かれた環境を描く上では必要なこと。これがあることで、キャサリンがとった決断の数々も理解しやすくなるはずなんです。ただ、非常に難しいのが映像にするためには、役者はもちろんクルー全員が安全な気持ちで挑み、信頼し合う現場にすること。そのため『ソルトバーン』でも一緒に仕事をした優秀なインティマシー・コーディネーターに参加してもらいました。それに加えて、毎日現場にセラピストかカウンセラーに来てもらい、仕事だけでなく、プライベートの問題でも、いつでも相談できる体制を整えました。映画の現場は非常に過酷です。だからこそ、皆が幸せで安全だと感じられるように常に気を配る必要があるんですよ」
マーゴット・ロビーは主演をしつつ、プロデューサーも兼務。「彼女は信じられないほどの才能の持ち主」と監督も大絶賛。「私の感覚としては『風と共に去りぬ』(1939年)みたいに壮大な大河ドラマのような時間経過やスケールで描きたかった作品なんです。それを実現してくれたのがマーゴット。もちろんジェイコブもだけど、とてつもない才能でしたよ。昔ながらの悲恋映画のテイストを知っていたし、2人ともクラシックな映画スターのようなカリスマ性を持っていることに、カメラを通して感動していました」
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
『嵐が丘』

story_イギリス北部の荒野。嵐が丘にあるアーンショウ家のひとり娘キャサリン(M・ロビー)は、父が連れてきた孤児ヒースクリフ(J・エロルディ)とともに育ち、惹かれ合うように。ところが、彼女は困窮から抜け出すために、丘の麓に越してきた大富豪との結婚を決め、ヒースクリフは姿を消す。数年後、彼は大金持ちになって帰ってくるのだが……。 監督:エメラルド・フェネル/出演:マーゴット・ロビー、ジェイコブ・エロルディ、ホン・チャウ、シャザト・ラティフ、マーティン・クルーンズ ほか/配給:東和ピクチャーズ、東宝/公開:現在、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
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text : Masamichi Yoshihiro
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1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。












