ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ~。
『SHE SAID シー・セッド/その名を暴け』
監督:マリア・シュラーダー/出演:キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、アシュレイ・ジャッド ほか/配給:東宝東和/公開:現在、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー中 ©Universal Studios. All Rights Reserved.
★とにかく早く観て!
#MeTooの原点を知りたい方へ★
これさー、本来アカデミー賞候補の筆頭株になるべき映画なのよ。なのに、なのに……! 完全スルーされて憤慨しております、よしひろおばさん。というのも、『SHE SAID シー・セッド/その名を暴け』は、映画業界の闇、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ事件を暴いた記者のお話。だからこそ、映画業界が支えるべき作品のはずなわけですよ。ということで、おばさん自らおかわり。日本でもすでに公開中なんだけど、なんせ他のオスカー候補作だの鬼滅だのなんだのが始まっちゃって、スクリーン数激減予定。だから、マジで早く観に行って。
御存知の通り、#MeToo運動に火をつけたのは、ワインスタインのセクハラが明るみに出たのがきっかけ。それを追っかけた女性記者2人が、どんだけ苦労して被害者の証言を取り付けたか、それと同時に各方面へワインスタインからの妨害があったかを描いているんだけど、超絶エモいのは2点。ひとつは、女性記者のひとりは、ワインスタイン問題に取り組む前に、大統領選のさなかに浮上していたドナルド・トランプのハラスメント疑惑を暴こうとしていたこと。これが冒頭で描かれてるんだけど、これまたひどいのよ。トランプ、ほぼ脅迫。おまけに当選しちゃったもんだから、その後叩かれたのは記者側。それゆえに、彼女はしばし表舞台からは退きます。ありえねー。ふたつめは、被害を受けた当事者の肉声が使われていること。グウィネス・パルトロウやローズ・マッゴーワンの電話音声はもちろん、アシュレイ・ジャッドなんて本人が実名出演。マジか。
いずれにしても、罪を認めない、ハラスメントを隠蔽する、っていう業界のシステム自体がアウトなのよ。それをアカデミーが評価しないなんてありえねー。新聞記者が根深い闇を暴くっていうと、たしかに2016年のアカデミー賞作品賞ほかを受賞した『スポットライト/世紀のスクープ』と激似ではあるんだけど(これまたいい映画。観てない人は是非)、それとこれとは別問題。#MeTooだってまだ全然解決してないんだから、これを観てもっと考えないとね。ちなみに原作は栄華の主人公2人が書いたピュリッツァー賞受賞のノンフィクション『その名を暴け: #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い』(新潮社)よ。
右のキャリー・マリガンがトランプ追ってた記者役でーす
ニューヨーク・タイムズ紙編集部。どでか!
左のゾーイ・カザンがセレブ被害者の交渉担当。めちゃいい芝居なの!