CULTURE

よしひろさん、「昨日なに観た?」
『生きる LIVING』

ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ~。

『生きる LIVING』

監督:オリヴァー・ハーマナス/出演:ビル・ナイ、エイミー・ルー・ウッド、アレックス・シャープ ほか/配給:東宝/公開:現在、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー中 ©Number 9 Films Living Limited

★生きてる、あたし? と思ったことがある方へ★ 地味にいい作品だけに、地味に終わってしまいそうだったので、とりあえず早めにおかわりしましたよ、『生きる LIVING』。なんせ、めちゃくちゃいい。他の映画ではかしましおじさんなビル・ナイが、めちゃくちゃ抑制きかせたお芝居だし、オリジナルの黒澤明版『生きる』よりもグッと今の人に分かりやすくなってるし、とはいえオリジナル版そのままだったりもするし。ほんっと、カズオ・イシグロさんの脚色がスーパー冴え渡っている傑作なんでございますのよ。 オリジナル版をご覧になったことがない人もご安心。これ一本だけ観てもじんわり感動。その後でオリジナル版をご覧になったら、ダブルで感動間違いなしですの。 本筋は、ことなかれ官僚主義で生きてきた主人公ウィリアムズが、余命宣告を受けたことをきっかけに、天命とはなにかを追求するってお話。だけどね、この英国版のすごさは、ウィリアムズにちょっとした恋心を寄せられて困ったちゃんの、主人公の元部下マーガレット。彼女がめちゃくちゃ未来に希望を持ったハツラツ女子なのよ。それとシケッシケのじいさまとの対比もすんばらしいんだけど、時代設定を考えるとすげー深い。ときは第二次大戦後の復興期。ウィリアムズはおそらく戦争に少なからずは関わっていたんでしょうね。で、マーガレットは来る60年代「スウィンギン・ロンドン」を牽引する世代なわけ。そう、ザ・ビートルズとかが出てきて、世界のカルチャーの中心になる時代を引っ張る世代になるのよ。そう考えてみると、めっちゃ深い世代交代の物語にも見えるの。 これをしれっとやってのけちゃったこの映画の制作陣、マジ尊敬。ということで、お早めにご覧になって~。

ウィリアムズにちょいストーカーされちゃうマーガレット。

めちゃ事なかれ主義のウィリアムズ。昭和の日本企業っぽいの。

この公園づくりがウィリアムズの生きがいに。

よしひろまさみち 
オトナミューズのカルチャーページ編集担当&映画ライター。おバカなコメディからおマジメ社会派まで幅広くカバー。ほんとにおもろいもんしか紹介しません。

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