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やみつきになる夫婦コメディ、 Netflixシリーズ『離婚しようよ』6月22日から配信スタート!

離婚しようよ やみつきになる夫婦コメディ、 Netflixシリーズ6月22日配信

松坂桃李、仲里依紗主演! TBSとNetflixのコラボレーション企画の第3弾『離婚しようよ』の時代性にも注目を

地上波の番組には「クール」という概念があり、春夏秋冬に合わせて――つまり3カ月ごとにラインナップが変わる。今でいえばちょうど春クールのドラマやアニメがクライマックスに向かっているタイミングだ。同時に、夏クールのドラマやアニメの情報が続々と発表されて興味を掻き立ててくれる。ただ、並行してドラマやアニメ好きにとっては“谷間”の期間も生まれてしまう。いまであれば、多くの作品が6月4週~5週に終了するなかで、次なるドラマが放送開始するのは大体7月2~3週。“番宣期間”としてバラエティ番組等で出演者を観ることは可能だが、ドラマウォッチャー的にはロス期間でもあるのだ。そもそもがそういうサイクルのため「いつものこと」ではあっても、人によってはモチベーションが下がってしまうタイミングといえるかもしれない。しかし、今期においてはその心配はなさそうだ。6月22日からNetflixシリーズ『離婚しようよ』が配信開始されるのである。『池袋ウエストゲートパーク』や『ゆとりですがなにか』の宮藤官九郎と『大恋愛〜僕を忘れる君と』や来年のNHK大河ドラマ『光る君へ』の大石静が共同で脚本を手がけ、『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』ほか多数の宮藤作品、そして『逃げるは恥だが役に立つ』等の演出を担当した金子文紀とコラボレーション。本作は『日本沈没―希望のひと―』『未来日記』に続くTBSとNetflixのコラボレーション企画の第3弾となり、配信時期もスタッフの布陣もドラマ好きにとっては嬉しいものとなった。しかも各話約60分×全9話のがっつりボリュームで、観る者を楽しませてくれる。

離婚しようよ

『離婚しようよ』は、三世議員の大志(松坂桃李)と国民的俳優のゆい(仲里依紗)の夫婦が離婚を決意するも、次々と試練が立ちはだかり――という物語。大志が過去に起こした女子アナ・三俣(織田梨沙)との不倫騒動を発端に、気持ちが離れてしまったふたり。ゆいはしょっちゅう問題発言で叩かれて炎上→謝罪がお家芸になりつつある大志のフォローに回ることや姑(竹下景子)との関係に疲れ、大志は人気者のゆいに依存するなかでコンプレックスを抱いていた(当選できたのも、ゆいの存在あってこそだったのだ)。子どもが生まれれば変わるかもしれない(そして大志の母からのプレッシャーもあり)と不妊治療を続けるもまだ効果はなく、限界を感じたふたりは離婚を決意。しかし、「CM等の契約が切られる」「選挙で再選するにはゆいの力が必要」と周囲に反対されてしまい、「選挙で当選したら離婚する」という展開になっていく……。基本的にはコメディテイストの作品であり、どうしようもない男をユーモラスに体現した松坂桃李のギャグセンスの高さと魅せ方の妙は流石の域。不倫がバレた際のテンパり具合からの土下座までのモーション、周囲に押し切られがちな受け身キャラの「いやぁ……」といったようなリアクションの表情等々、周囲に迷惑をかけまくる好感度最低の人物ながらも画面の中では主人公として引っ張る絶妙な塩梅を披露している。対する仲里依紗も、世間に求められる女性像を演じつつも「それおかしくない?」と内心は思っている透け具合や、かなりの頻度で用意されているキレ演技のシーンをエネルギッシュに演じ切っており、大志とゆいの攻防を観ているだけで笑えたり、「それはないよ」とツッコめたりとエンタメ性を強くフォロー。モノローグも多い構成だが、ふたりの芝居によって大志とゆいの“本音”をしっかり感じ取れる。

離婚しようよ

そうした松坂と仲の相性の良さや掛け合いの妙が明確に出ているのが、“夫婦あるある”のシーンだ。例えば第1話ではゆいが「パンツが机の上に置かれている」「爪切りが出しっぱなし」「換気扇がつけっぱなし」と大志に激怒するのだが、この際の大志のとぼけ具合や面倒くさがっている感じであったり、それを嗅ぎ付けてゆいがさらに激高し――という展開は多くの家庭で日常茶飯事ではないか。該当シーンでは「気を悪くしたなら謝るよ」「気を悪くしたから怒ってんの!」という夫婦のやり取りも収められており、こうした解像度の高いセリフに「わかる……」と感じる視聴者は多いはず。『離婚しようよ』には「夫婦とは何なのか?」という大テーマがあり、ただ笑えるだけでなくそこに“実感”がこもっているのが特徴だ。超・険悪なふたりが配信番組の間だけ仲睦まじい夫婦を演じる姿は滑稽であるものの、その根底に私たちの生活にもリンクするリアルなまなざしが流れているからこそ、「政治家」「芸能人」という遠い存在であってもどこか他人事と思えない。根本的には愛していて夫婦になったとしても、他人と生活を共にするのは楽しいばかりではない。ストレスも常に生まれるし、自分の主張を通した結果、関係が悪化してしまうこともある。裏切りや嫉妬、日々の疲弊によって対話がなくなっていた大志とゆいが、本音を晒してぶつかり合うことで互いの愛情に気づいたり自身の行動を省みたりして分かり合っていく展開は、夫婦というものの面倒くささと愛おしささえ感じさせる。そうした意味ではこのドラマ、後半に行くほど面白くなる構成になっている。第5話のレストランでの大志とゆいの対話シーンをひとつの分水嶺として、第7話の会見シーンや第8話の公開討論会、第9話のクライマックスなど名シーンが連発。一気見するもよし、自分のペースでちびちび観ていくもよしだが、話数が進むほどにギアが上がり、この夫婦の行方が気になって仕方なくなるということは伝えておきたい。

最後に、『離婚しようよ』のもう一つの特徴を付け加えて締めとしたい。それは、時代性。「政界」「芸能界」を舞台にした本作では、夫婦という題材を出発点にして「男女間の格差」や「夫婦の在り方という価値観の押し付け」といった内容に切り込んでいく。「こういう時代だから」と街頭演説で「多様性」を掲げながら女性蔑視発言を連発してしまったり、「お嫁さんにしたい女優No.1」のレッテルを貼ってしまったり、不倫を「男の甲斐性」で片付けようとしたり、のし上がるために「性被害」という言葉を多用したり――。ゆいの大志に向けたセリフで「サポート、内助の功、三歩下がって……そういう考えが根っこにあるから“女らしい”とか言っちゃうんだよ」というようなものがあるが、時に物議をかもしそうな過激な発言も盛り込み、歪な時代の肖像やその中で生きる私たちの日々変化する夫婦像についての視座も与えてくれる。『離婚しようよ』は配信作品ならではの“強み”を生かした、切れ味鋭い挑戦作でもあるのだ。

Netflixシリーズ『離婚しようよ』6月22日(木)よりNetflixにて全世界独占配信

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1987年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、複数のメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、エンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。トークイベント・映画情報番組への出演も行う。

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1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、複数のメディアでの勤務を経て2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、インタビューやコラム執筆のほか、トークイベント・映画情報番組に出演。2023年公開『ヴィレッジ』ほか藤井道人監督の作品に特別協力。『シン・仮面ライダー』『キリエのうた』ほか多数のオフィシャルライターを担当。装苑、CREA、sweet、WOWOW、Hulu等で連載中。Twitter・Instagram「syocinema」

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