編集K(以下K) それがさ、観たし、めちゃ好みだった。
Y え、マジで⁉ 意外!
K 新興宗教の話でしょ。私、人が何かを信じるっていうことに興味があって。「天使」と呼ばれるコワ~イ何かが、「告知」と言われているけど、該当する人に死亡時刻を「預言」して、3体の怪物みたいな「地獄の使者」が出てきて、地獄に連れていく……っていう、その「試演」って言われている惨殺っぷりもまあまずありえない超常現象なんだけど、それらの一連の出来事に宗教家が大きな物語を当て込んで、人の気持ちをつかんだり操ったりする、その過程がすごく興味深いんだよね。
Y うわ、なんか、賢いな、視点が。
K 私たち、オウム真理教事件世代じゃない。あとはユ・アインとか、役者さんたちが上手過ぎて怖かったね。
Y ほんとそれ。私はそこ。とにかく役者さんがスゲー、ってなった。全6話、通しで出てくる人もいるけど、ぶっちゃけ前半と後半で分かれてる感じなのよね。で、前半に「議長」って呼ばれてる教祖っぽい感じで出てくるのが主演って言われてるユ・アインで。30代半ばの本格派俳優って感じの人で、映画『ベテラン』『バーニング 劇場版』でもいいなと思ったけど、不気味さがすごい。モデルの竹下玲奈さんはユ・アインのこと超好き~っていつも言ってるんだけど、この不気味なユ・アインも観たんだろうか。今度お会いしたときに聞いてみよう。
あらやだ、イケメン♡
Y あとユ・アインを追っていく刑事役のヤン・イクチュンもやっぱりいいのよ。日本でも活躍していて映画『かぞくのくに』とか、今をときめく菅田将暉と『あゝ、荒野』とかにも出てるけど、ダントツ好きなのは自身で監督もしてた『息もできない』って映画。私大好きなの。ヨロブン本当に観て! ある意味、ご自身の実話なのかなあ? もう救いようのない話なんだけど、救いようのなさに没入できた。すごく切なかったんだ。『地獄が呼んでいる』では、妻を殺された過去はあるものの、割とフツ~の刑事として出てくるけど、ヤン・イクチュンっていう俳優の名前を忘れて、その役名で見えてくるんだよね。こういうオッサン、本当に居るわ、っていう。
前半、視聴者と一緒に難解な物語を進んでいってくれるヤン・イクチュン様
Y あと後半パートの主役と言えるパク・ジョンミンね。テレビディレクター役で出てくる。
K ああ、あのイケメンね。
Y イケメン?
K 椎名桔平みたいな、キレイな顔の人でしょ。
Y イケメン? い、イケメンなの? この人だよ? 子どもが生まれたばかりのお父さんのテレビマンの役で出てくる人だよ? 映画『それだけが、僕の世界』って映画では、イ・ビョンホンの弟でサヴァン症候群の役だった人だよ?
K その人だよ。イケメンじゃない? その映画観たよ、あ、あの役の人なんだ! 気づかなかった。
右の方がパク・ジョンミンさん。韓国では次世代の演技界の神と呼ばれているそうですよ
Y 出る作品出る作品で顔まで変わって見えるのよこの人。なんなの。まあ、イケメンの定義は人それぞれだからいいとして、前半で「告知」を受けるシングルマザーの女優さんとかも、お名前を知ってる人じゃないけど、すごく引き込まれたよね。いちいちクオリティが高い。そっかー、話題作だしイッキに観たけど、『地獄が呼んでいる』、すっごい面白いとか好きかと問われたら私はちょっと分からなくて、とりあえず役者の演技がすごかったとしか、今はまだ言えない。
K 完全にシーズン2があると思われるし、今回は序章に過ぎないよね。謎がたくさん残されていて、チョイ役のタクシー運転手ですら、登場人物全員が何かの伏線じゃないかって疑っちゃう(笑)。そういう意味でも怖い! なんかね、キリスト教信者が多い、韓国らしい作品だとは思ったよ。私はすごく面白かった。「罪を犯した者が神によって裁かれる(べき)」っていう分かりやすいテーマがまずあって、作中で出てくる「矢じり」っていう暴走する信者たちがネット社会のムードを上手く表してる。世界的に流行った『イカゲーム』と似ている部分もあるんだけれど、「罪」という内省的なもの=「自律」って言わせたりもしているけど、そこに焦点を当てているところが興味深い。そして、どうやってそれが破綻していくのかが知りたい。今すぐ!
この女優さん、いろいろスゴかった……!
うわ~、髪型といい色メガネといい、あの2代目議長、怪しさ満載!
Y なんか、難しい作品ってさ、観た他の人と話すると気づかなかったことに気づけていいね。私は「矢じり」たちの、私刑っていうかさ、「みんなで寄ってたかって成敗するぞ」みたいな誤った正義感=SNS社会への風刺とか、未成年や薬物依存の犯罪者が軽い処罰で済まされちゃう、いわゆる「法と正義」の不条理への問題提起とかはすごく感じたんだけど、韓国の宗教観ってところまでは引っかからなかったわー。
K あ、ほんと。個人的には村上春樹的なところがあるなと感じたんだよね。『1Q84』って小説を思い出したよ。あの小説にもカルト集団が出てくるでしょ。ここから先はネタバレになるから誰がっていうのは避けるけど、物語の中で「悪いことをしていないのに」死亡宣告を受ける人がいるでしょう。罪は犯していないのに、なぜ地獄に行くのか分からない。だからずっと死にたいと思っていた……っていう人が、『1Q84』の天吾っていう人物と似ているなーって。
Y へえ、読み直そうかな『1Q84』。でも韓国ですごく支持されてるんだよね、村上春樹作品。確かちょうど『1Q84』が出たころ、前の韓流ブームで。そのころ居た雑誌である韓流スターの方にインタビューしたことがあるんだけれど、言ってたわ。『1Q84』を翻訳版じゃなく日本語版のまま、理解できるようになりたいくらい、村上春樹ファンだって。あなたは母国語で理解できて、うらやましいですっておっしゃっていた。私は今や、あのときのスターの方に「あたしゃ字幕じゃなく韓国語でドラマや映画をディテールまで理解できるようになりたいです!」ってそっくりそのままお返ししたいけどね。
空中に浮かんでる不気味な顔が「天使」で、「告知」をしている瞬間でございます。こんな天使おるかい!
K あはは。多分ね、歴史的な背景を踏まえて韓国のほうがやっぱりシステム(政治)に対しての明らかな失望とかを経験しているから、村上春樹的な世界観により共鳴するんじゃないかと思うよ。あくまでも私の意見だけど。だって、韓国ってまだ休戦中だもんね。日常的に意識はしないだろうけど、基本的にはそういう社会不安の中にいるわけじゃない。「アメリカンドリーム」って、=成功して大金を得てよい暮らしをするっていうのだと思うけど、そういうものとは違う理想がある気がするんだよね。だから「良く生きたい」っていう理想が、ドラマとか映画とか観てるとよく出てくる気がする。
Y だから「悪いことをしたら地獄に行く」という倫理観が根底にあって、逆に「悪いことをしていないのになぜ地獄に行かなきゃいけないんだ」=悪いことしてないのになんでこんな目に遭うんだ、っていう問題提起の作品が生まれるのかな。この作品は「地獄行きを告知された人は何か悪いことをしたに違いない」と人間が寄ってたかってアラ探しするシーンもあるしね。あれ、でも、悪いことしてないのに「告知」された人もいて、理由とかまだ分かってないよね。そもそも理由あるの? ってかあの「試演」ってカラクリあるの? もうなんか混乱してきた! もう一回観る!
K それが世界的にヒットしてしまうのが面白いよね~。そうだよ、いろんな謎が分からないままなんだよ、まだ。「矢じり」たちも暴走してるし、新真理会という組織がどうなっていくのかも分からない。破綻していくのかな。シーズン2、あるよね、きっと。早く観たい!