「大好きな漫画ほど実写化されるのが嫌」現場に原作を持ち込んで挑んだ映画『アンダーカレント』主演・真木よう子インタビュー
10月6日(金)に公開を迎える映画『アンダーカレント』で、主人公のかなえを演じる真木よう子さんに、映画ライター・よしひろまさみちさんがインタビュー。漫画マニアだからこその役作りといった俳優としてのお話だけでなく、反抗期まっただなの娘さんとの心温まるお話なども交えつつ、等身大の女性としての近況もお話ししていただきました。ネタバレなし! 安心してお楽しみください。
よしひろまさみちさん(以下、よしひろ)
「原作はお読みになっていたんですか?」
真木よう子さん(以下、真木)
「原作のコミックは、映画のお話より先、20代のころに読んでいて好きな作品でした。この作品全体にあるテーマが“人を理解する”みたいなところも、原作を読んだとき、また映画に入ってからも考えましたね。今まで分かった気になっていたけど、あることをきっかけに“そっか、こういう人なのか”とか“本当のところはどうなんだろう”ということはよくあることだとは思うんです。でも、結局、自分のことですら100%分かっていないと思いますし、ましてや他人のことは100%は分からない。この作品はその“分からない”を、分からないままにするのではなくて、理解しようとする一歩を踏み出そうとする物語なんだと思います」
よしひろ
「真木さんが演じたかなえは、失踪してしまった夫のことが分からなくて困ってますもんね」
真木
「意見が違うけど大切な人っていますよね。分からなくて突っぱねるとか、うやむやにするのではなくて、どうしてその人がそういう考え、行動をとったのかに寄り添って理解しようとすることが大切なんじゃないか。理解する手前でもいいから、寄り添うことが大事。分からなくてもいいけど、分かろうとする愛情が一番大切だ、って、かなえを演じて強く感じるようになりました」
よしひろ
「原作のイメージが役作りに役立ちましたか?」
真木
「じつは……私は漫画マニアなので、大好きな漫画であればあるほど実写映画化されるのが嫌なんですよ(笑)」
よしひろ
「え!? これも?」
真木
「オファーをいただいたとき、これを実写化するんだったら他の誰にもかなえちゃんをやらせたくない、って思ったんです。じゃあ、やるからには原作のかなえちゃんにできる限り近づけたいと思ったんです」
よしひろ
「とはいえ、映画と原作が全く一緒にはならない」
真木
「そう。だから、現場には台本と原作本を必ず持っていて、台本上で原作と相違ないところは、漫画のかなえちゃんがどこに目線を送っているか、表情や心情はどんなか、ということを考えていました。逆に漫画にあったセリフが台本にないシーンは、映像として成立していればそのまま表情や芝居だけでいきましたけど、どうしてもセリフを捨てたくないところは監督にかけあいました」
よしひろ
「それで足されたセリフのシーンもあるんですね」
真木
「あります。すり合わせしながら納得いくまでやりました」
text:よしひろまさみち