こじらせていて毒強め。ドキュメンタリー映画『パトリシア・ハイスミスに恋して』【よしひろまさみち】
ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ〜。
よしひろさん、「きのう何観た?」
『パトリシア・ハイスミスに恋して』
★屈折した愛がお好きな方へ★
こじれとるわー。というのが、このドキュメンタリー映画の感想。そもそもなんですが、パトリシア・ハイスミスっていう作家をご存知かしら? アラン・ドロンの『太陽がいっぱい』(60)とか(そのリメイクの99年『リプリー』も)、『キャロル』(15)とか、彼女が書いた小説の多くがハリウッドで映画化されているから、そっちでご存じの方は多いかもだけど。そのハイスミスさんの伝記ドキュメンタリーが『パトリシア・ハイスミスに恋して』です。そんなハイスミスさんの数々のエピソードの中でも、あまりにもこじれているあるお話が気になっておかわりしてきました。
ハイスミスさんと親交の深かった作家や親族の振り返りインタビューに加え、彼女の貴重な映像資料などなどで、大作家の彼女の素顔を解き明かしていく、っていう仕立てになっております。ここで重要なのが、彼女の死後に発表された大量の日記。ここで吐露されたことをもとに、聞き取りをしているのね。ほら、日記ってそもそも他の人に見せる用に書いてるものじゃないでしょ。それをもとにしているから、まー毒っ気強めなの。しかも彼女はレズビアン。彼女が生きた大半の時期は、セクシュアリティを明らかにはできない時代だったから、抑圧も想像以上だったわけです。それをどんどこ明かしていくもんだから、自分らしく生きることがつらかったでしょう……と思うことばかり。
で、問題のエピソードは『キャロル』にまつわるお話。なんと彼女の若かりしころの実話がベースだったのよ! でも、あんなきれいな幕引きだったわけではないのが実話版。