女性がCCOになり、妖精だって悩む。最新作『ウィッシュ』で感じる100周年のディズニーの変化
ディズニー・アニメーションの司令塔
ウォルト・ディズニー・カンパニー100周年を迎えた2023年。アニバーサリー・イヤーでパークやショップなどは祝祭ムードとなった2023年でしたが、それを締めくくるのがウォルト・ディズニー・カンパニーの本丸、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ(WDAS)の最新作『ウィッシュ』です。クリス・バック監督に脚本はジェニファー・リー、という『アナと雪の女王』の座組で製作された、この冬最高のファンタジー映画。じつはジェニファー・リーは、WDASでクリエイティブ部門のトップCCOを兼任しています。
「この作品の企画が始まったのは、『アナと雪の女王2』の製作中のことでした。CEOのボブ・アイガーと会社で会ったときに“そういえば100周年があるけど、君たちは何を作るんだ”と言われたんですよね。これはえらいときにCCOになってしまった、と思いましたよ(笑)。それで考えたんですが、私がこのポジションに就いたことで、スタジオの雰囲気は大きく変わったんですね。具体的には女性の私がトップになったことで、勤めているクリエイターたちが積極的になったんです。女性が大企業のトップになることは珍しいことではありませんが、こと映画の業界やアニメーションの業界ではまだまだだったんです。それを変えたことで、あらゆる人にチャンスがある、ということを示すことができた。もちろん私もそれに応えるために、個々の才能に見合った仕事のチャンスを与え、これまで以上に新しいことにチャレンジできる場を作るよう頑張っています。そんな中で生まれたのが『ウィッシュ』。人々の願いにフォーカスした作品ですが、CCOとしての経験やフィロソフィーを反映した作品になったと思っています」
本作での新しいチャレンジは目に見えて大量。悪の魔法使いが魔女ではなく男性だったり、名曲「星に願いを」へのオマージュのようなキャラクター・スターが全能の妖精ではなく弱さも持っていたり。
「それらも今の時代に即していると思うんですが、ラテンのカルチャーをフィーチャーしたこと、楽曲の製作に当時20代だったジュリア・マイケルズを起用したことも大きいですね。特にジュリアは、素晴らしい仕事をしてくれました。ディズニーのミュージカル舞台を観て育った若者だけど、15歳から仕事を始めたからキャリアは十分。ミュージカルの要素はもちろんだけど、今の若い人が好む音楽の方向性を熟知しているから、古典的なディズニー・ミュージカルにプラスアルファをすることができたんだと思います」
text:MASAMICHI YOSHIHIRO
otona MUSE 2024年2月号より