「性」と「世界旅行」を通してひとりの女性の成長を描く超異色作。映画『哀れなるものたち』はアカデミー賞総ナメか!?【よしひろまさみち】
ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ〜。
よしひろさん、「きのう何観た?」
『哀れなるものたち』
★ジェンダー差別大反対の方へ★
試写で観てから時間経ってるし、無事アカデミー賞主要賞候補になったことだし、見直しておきますか……と、劇場に行ってまいりましたよ、『哀れなるものたち』。せっかく観るなら、音と映像のいいスクリーンで……と選んで大正解。業務試写で観たときよりもぐっと理解の解像度上がりました。これ、映画の2/3くらいずっと不穏なサウンドが流れているんだけど、その意味もよく分かったわ〜。
身ごもっていた胎児の脳を移植されて蘇った女性・ベラが、文字通り赤ちゃん脳から大人脳に成長するまでの過程を、性と世界旅行で描いた超異色作。マジでセックスで始まってセックスに終わる、という18禁納得の描写がオンパレード。なのに、ちーともセクシーじゃないのよ。冒頭30分くらいのベラは、完全に赤ん坊状態なので、性を覚えて夢中になる=搾取され利用されるわけです。が、しかし、旅のプロセスによって目覚ましい成長を遂げ、一人の自立した人間になっていくのね。この「自立」ってのがすげーの。ネタバレになっちゃうから詳細は避けますが、後半部でベラがベラになる前を知る人が現れるのよ。そこでようやくこの映画の意味が理解できるという仕掛け。なんでベラになる前の彼女が、妊娠しているにも関わらず自ら命を絶つ選択をしたのか、一発でよ〜く分かっちゃう。
めちゃくちゃ珍妙な設定だし、原作ともまるで違う展開だし(原作はベラの視点じゃないの)、おまけに18禁だし。ざっくりとストーリー読んだだけだと「え、ホラーなん?」って勘違いしちゃいそうだけど、全然違うから! たとえていうなら『バービー』とセットで観てほしい、ジェンダー差別がない世の中を求める人へのエンパワーメント映画よ〜。