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よしひろまさみち

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「性」と「世界旅行」を通してひとりの女性の成長を描く超異色作。映画『哀れなるものたち』はアカデミー賞総ナメか!?【よしひろまさみち】

映画「哀れなるものたち」場面写真

ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ〜。

よしひろさん、「きのう何観た?」
『哀れなるものたち』

哀れなるものたち

story 自ら命を絶った妊娠中の女性が、天才外科医バクスター(W・デフォー)の手によりベラ(E・ストーン)として蘇生する。彼女のからだは大人だが、脳は身ごもっていた胎児のもの。徐々に成長する彼女は、世界を見たい欲望にかられ、放蕩者の弁護士ダンカン(M・ラファロ)と共に旅に出る。

監督:ヨルゴス・ランティモス/出演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー ほか/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/公開:現在、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー中(R18+)© 2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

★ジェンダー差別大反対の方へ★

試写で観てから時間経ってるし、無事アカデミー賞主要賞候補になったことだし、見直しておきますか……と、劇場に行ってまいりましたよ、『哀れなるものたち』。せっかく観るなら、音と映像のいいスクリーンで……と選んで大正解。業務試写で観たときよりもぐっと理解の解像度上がりました。これ、映画の2/3くらいずっと不穏なサウンドが流れているんだけど、その意味もよく分かったわ〜。


身ごもっていた胎児の脳を移植されて蘇った女性・ベラが、文字通り赤ちゃん脳から大人脳に成長するまでの過程を、性と世界旅行で描いた超異色作。マジでセックスで始まってセックスに終わる、という18禁納得の描写がオンパレード。なのに、ちーともセクシーじゃないのよ。冒頭30分くらいのベラは、完全に赤ん坊状態なので、性を覚えて夢中になる=搾取され利用されるわけです。が、しかし、旅のプロセスによって目覚ましい成長を遂げ、一人の自立した人間になっていくのね。この「自立」ってのがすげーの。ネタバレになっちゃうから詳細は避けますが、後半部でベラがベラになる前を知る人が現れるのよ。そこでようやくこの映画の意味が理解できるという仕掛け。なんでベラになる前の彼女が、妊娠しているにも関わらず自ら命を絶つ選択をしたのか、一発でよ〜く分かっちゃう。


めちゃくちゃ珍妙な設定だし、原作ともまるで違う展開だし(原作はベラの視点じゃないの)、おまけに18禁だし。ざっくりとストーリー読んだだけだと「え、ホラーなん?」って勘違いしちゃいそうだけど、全然違うから! たとえていうなら『バービー』とセットで観てほしい、ジェンダー差別がない世の中を求める人へのエンパワーメント映画よ〜。

エマさん、すっごいのよ。プロデューサーなの

哀れなるものたち

このメイク、元ネタはフランシス・ベーコンの自画像です(さ、ググって)

哀れなるものたち

途中からおかしくなる伊達男。尻出します

『哀れなるものたち』公式

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WRITER

よしひろまさみち/映画ライター

1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。

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