岡崎京子作品『リバーズ・エッジ』『東京ガールズブラボー』も配信開始!市川実和子が振り返る90年代
岡崎京子のマンガが連載されていた『CUTiE』で、当時、看板モデルとして毎号のように登場していた市川実和子さん。実和子さんが初めて表紙を飾った1993年9月号には『リバーズ・エッジ』が連載されていました。
「『リバーズ・エッジ』は当時、読んでたけど、正直怖かったです。怖いというか、なんでしょうね、その頃、自分で読んでたマンガは『笑う大天使』や『動物のお医者さん』とか、わりと平和な作品が多かったんですよ。だから岡崎さんのマンガのような胸がえぐられるような、人間の心の深いところを描く作品って、馴れてなかったせいもあって衝撃でした。だって、私当時、ものを知らない17歳でしたから(笑)。今回、改めて読み返してみて、名作だなと思いました。
でも私が(CUTiEに)出ていたせいか当時、岡崎さんのマンガに出てくる女の子みたいなんだろうって、思われてたみたいな感覚があって。あるミュージシャンの人が「会ったら意外と普通の人だったって言ってたよ」って残念そうに言ってた雰囲気の話を聞いて、たぶんそういう期待もされていたのかもなって勝手に思っていました。直接はお会いしたことなかったけれど、人づてに「岡崎京子さんが『実和子、可愛い可愛い』って言ってたから、てっきり知り合いかと思ってた!」って聞いたことがあったんです。
だからか不思議に親近感があって、でも私は、怖いけど、なんだかわかんないけどカッコいいなって岡崎さんの世界に憧れていたし。そういう女の子に見られるのにどうしたってそうはなれないっていう、変なもどかしさみたいのがありましたね。カッコつけてクラブにも行ったりしましたけど、これは何が面白いのかな? って思いながら行ってて、で、結局面白くないから続かないんですよ(笑)。
あの時代って、ぐちゃぐちゃしてましたしね、ぐっちゃぐちゃのぐにゃぐにゃの、なんかこう泥みたいな(笑)。この間たまたまYouTubeで、当時やってた深夜の音楽番組とか観てたら、これは今のテレビじゃできないよなってこといっぱい言ってたりして。悪いことをした話とか、いつしたしないとか、普段だったら表立って言えないようなことを話したりすると、それがワッとウケたりとかしてて。当時はそれを地上波で言うことが面白かった気がするんだけど、観ていてかなり引いてしまったんですよね、今の私。時代も世間も自分の感覚も、本当に色々変わったんだなぁって強烈に感じました。
私はバブルがはじけてからの世代なので、この頃(『東京ガールズブラボー』)の元気な感じはないんです。当時、それくらいの世代の10歳くらい上の人からは「実和子たちの世代って、外国に憧れとかないの?」って聞かれたりしたけど、自分的にはもちろんちゃんと憧れもしたんだけど、そうは見えなかったんでしょうね。たぶん身近にあったから、そこまで枯渇してなかったんだと思います。
自分が載った雑誌とかも、そんなにとっておかないんですよ。今、90年代が流行ってるって聞いても、それを見て可愛いなとは思うけど、私が「時代の当事者」と言われても、そういう感じが自分になくて。昔からそれこそコンバースとかラルフローレンのボタンダウンとか、トラディショナルな普通のものが好きで、実際はまったくおしゃれでもトンガってもなくて。当時も今も、自分って本当に平凡な生き物だなと思ってます。今こうやって昔の雑誌とか見ると、強烈に思い出しますね。なんか、私だけど私じゃないっていうか(笑)、空っぽなんですね、そんなんだからまだモデルの仕事もしてるんだろうなって思ったり」
□うたかたの日々について
これでボリス・ヴィアンを知りました。知らない世界を見せてくれた本。そういう意味で強烈に残ってます。サルトルもこれで知って、挑戦しました。離脱したけど(笑)。
岡崎京子作品が配信開始!
1月19日より岡崎さんの作品が電子版でも読めるようになりました。
各電子書籍ストアにて販売中です。
photograph:MASAYUKI NAGAMINE / styling_KOZUE ONUMA(eleven.)/ hair&make-up:HIROMI CHINONE
otona MUSE 2024年3月号より