宮沢りえさんが初のコメディで
政治家の卵を演じる、
『決戦は日曜日』インタビュー
現在発売中のオトナミューズ2022年2月号で紹介している宮沢りえさん出演の新作『決戦は日曜日』。誌面は限りあるスペースだったため、ちょっとだけコメントを掲載しましたが、ウェブでは拡大バージョンを独占公開! 政治家の卵に担ぎ上げられて、選挙という知らない世界に放り込まれる有美役を演じた宮沢さんに、この作品の挑戦、面白さをまるっとうかがいました。
――コメディが初めてというのは意外でした。これまでコメディに挑戦してみたい、という気持ちはありました?
宮沢りえさん(以下宮沢) いつかはやってみたいと思ってました。これまでも演じたことがない役をやってみたい、という気持ちはいつも持ち続けてきたんですよ。たとえば『紙の月』。あれも私にそういう役の経歴はないものを任せようとしてくれました。それって私にとっても監督にとっても挑戦ですし、その挑戦は素直に受け止めたい、と思えるんですよね。
――しかも政治家の役も初めてですよね。初めてとは思えない面白さでした。
宮沢 わぁ、嬉しい。コメディということもですが、役柄も今まで自分がやったことのない政治家の卵役でしたから、楽しんでいただけて本当に嬉しいです。お話をいただいたときは不安でしたが、台本を読んでみたら、自分にできるかどうかっていう前に、単純に本当に声出して笑っちゃうくらいすごく面白かったんですよ。
――選挙の内幕は、私達が知らない世界ですものね。
宮沢 この作品で描かれている選挙の内幕は、コミカルに演出されていますが、どこまでがフィクションでどこまでが本当かっていうのはわからないですよね。でも、監督が長い時間をかけて取材して、この物語を紡ぎあげてるので、笑い飛ばせるエピソードのなかにも真実があるだろうと思うと、本当に笑っていいのか、って悩みますよね。私もあらためて完成版を見直したんですけど、素晴らしい作品だと思いました。
――坂下雄一郎監督とは初めてでしたが、いかがでした?
宮沢 最初お会いしたとき、とても内向的で感情を表に出さない方なので、「もしかして人嫌い?」と思ってしまいました。でも、脚本を読んだら、人が好きで仕方ないってことがすぐに分かりました。それぞれのキャラクターが粒立っていて、誰一人として欠けちゃいけない存在に描ききれているんです。
――窪田正孝さんとの共演も初めてでしたが、いかがでした?
宮沢 窪田さんはすごくどっしりしてるんですよ。私の方が現場で自由にやってるのを受け止めてくれる。客観的でそのシーンで行われてることを見逃さないっていう眼力がありました。有美さんは彼が演じた谷村くんに頼り切りでしたから(笑)。でもね、そういう骨太なところがあるのに、肌の色がとても白くて透けて見えちゃうんじゃない? ってくらいに透明感があるんですよ。そのギャップに驚きました。
――監督にしろ主演の窪田正孝さんにしろ、下の世代がメインとなる中に入っていく、という機会が増えたことはどう感じられてます?
宮沢 私はもっともっと教えてもらいたいし、学びたいんですよね。先輩方からさまざまなことを教わってきたし、私はまだまだだ、と思っているから。でも、気づくと「今日は私が一番年上!?」という現場が増えてしまいました(笑)。いつの間にか、私が言葉を与える側になってしまった、という戸惑いは正直ありますね。でも、この作品においては、若い方々から私が学んだことがとても多いんですよ。才能ある皆さんですから、物怖じすることなく、対等にぶつかってきてくれたので、とてもやりやすく、いい刺激になりました。
――この作品の良さは、小難しいこと抜きに政治の裏側を暴いて、観ている人に「このままでいいの?」と問題提起しちゃったことですよね。
宮沢 そうですね。日本人としてこの国に住んでいて、疑問に思うことはたくさんあっても、その小さな疑問が国を動かすほど大きなことにはならないだろうっていう思い込みがありますよね。それって一番よくないことだと思うんです。小さな疑問でも、それに対して深く考え、行動できる大人でありたいと思っています。私は役者ですから、どんな役にでもなりたいし、そのためにはプライベートな自分の印象なんてできるだけなくしたいんですよね。そうすると、政治的なメッセージをはじめとする疑問や不満があっても、リアルな言葉にして発信するのは抵抗が出てしまいます。そんなモヤモヤした気持ちをずっと持ち続けていたとき、この作品に出会えたことはありがたいですね。一つの芸術作品の衣をつけて世間に疑問をなげかける、という機会に参加できてるのは、日ごろの自分の中の弱虫な部分を代弁してくれた、という満足感もありましたね。
intervew & text:MASAMICHI YOSHIHIRO