なぜ今? 36年前の日本映画『異人たちとの夏』を現代のイギリスを舞台にリメイクした『異人たち』
ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ~。
よしひろさん、「きのう何観た?」
『異人たち』
story ドラマの脚本家アダム(A・スコット)は、ロンドンのタワマンに一人暮らし。12歳のときに亡くした両親の思い出をもとに執筆を始め、幼少期に過ごした家を訪れると、そこには昔のままの姿で暮らす両親が……。
監督:アンドリュー・ヘイ/出演:アンドリュー・スコット、ポール・メスカル、 ジェイミー・ベル、クレア・フォイ ほか/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/公開:現在、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー公開中 ©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
★おひとりさまがお好きな方へ★
またおかわりしてしまった……。なんせあまりにもいいんだもの、『異人たち』。山田太一の小説が原作で、大林宣彦監督によって映画化もされた『異人たちとの夏』を、イギリスを舞台にリメイクした作品どえす。
元があるとはいえ、元は知らないでも読まないでも観ないでも大丈夫。というか、逆にオリジナルの小説や映画は、『異人たち』を観た後でチェックしていただけるとありがたし(もちろんすでに読んだり観たりしたことがある人は、よりマスト)。早くに亡くした両親の霊と再会した中年男が、孤独を貫いてきた人生ってなんだったんだろう……って振り返り、さぁ次はどうする! っていうお話。
これに関してはオリジナルも今回のバージョンも同じ。変わったのは国とセクシュアリティ。ゲイなのですよ。で、今の中年のゲイ(あたしも含む)は、お友だちはもちろん親にカミングアウトするなんてもってのほか! っていう青春時代を過ごしたから、そのトラウマを抱えて孤独を選ぶ人も多かった、という背景をご理解いただけると、この物語の中核にあるものがクッキリ見えてきます。
そのへんのこと、じつは本編をご覧になった原作者の山田太一さんのご家族の方々が語ってらして、それが劇場パンフに載ってますの。それを読むとさらにクッキリハッキリ。いやー、おひとりさまって固定観念持たずに考えることが多くて可能性無限大だわ~、と当事者のあたしは思ったんですが、みなさんどう思うかしらん。
亡きパパ&ママと奇跡のクリスマス。あー、切ない
突如出現のハリー。イケメン過ぎるのよ
元気なうちに話し合いたかったわよね
WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。