NYで音を立てたら即死。最新作『クワイエット・プレイス:DAY1』主演ルピタ・ニョンゴの見解は?
騒音だらけのNYを沈黙させる最凶スリラー
映画のキャッチコピーで、ここまでシンプル、かつ物語最大の設定を説明した作品はなかっただろう『クワイエット・プレイス』シリーズ。だって、「音を立てたら即死」ですよ。ほんと、それに尽きる2作は、スリラー映画としては異例の大ヒットを記録。音に敏感な宇宙からの侵略者が人間社会を滅ぼしたあとの世界を描いたシリーズでしたが、最新作『クワイエット・プレイス:DAY1』はヤツラが地球に襲来したとき、音に溢れかえった大都市ではどうなっていたか、というお話に。「そもそもこのシリーズが大好きだったし、音を立てられないっていうアイデアが素晴らしいと思ってた」というのは、本作の主演を務めたルピタ・ニョンゴ。
「このシリーズのすごいところは、実態がよく分からないモンスターが出てくるスリラー映画なのに、それ自体はほとんどスクリーンに現れず、対峙する人間たちのドラマになっていることね。しかも、そういう人間ドラマってセリフによって語られるのが当たり前なのに、音を立てられないっていう設定ゆえにさまざまな工夫がされているのよ。そんなアイデアがあること自体、すごくない?(笑) しかも、この設定によって、普段から私たちがさらされている騒音は有害なもので、静かにしていることによって思慮深くなるってことに気づかされるし。本当に素晴らしいシリーズだと思う。でも、今回の新作は、敵が音に反応することを、人類が全く分かっていない前日譚。脚本を読んだときにすごく興奮したし、すぐに出演を決めたわ」
彼女が本作への出演を決めたきっかけはもうひとつ。前2作のプロデューサー&監督のジョン・クラシンスキーとの出会いでした。
「ジョンが私に話してくれたのは、“じつはこの作品はシリーズ化するつもりがなかった”ってこと。本当に意外だった。それで続編を作ろうと決めた理由が素晴らしくてね。『クワイエット・プレイス』にはスリラー映画っていう昔からあるジャンルに新鮮に感じられるものを生み出せる可能性があり、それならば自分が監督・脚本するのではなく、他の才能に任せて世界を広げようってことだったの」
地球を襲う“何か”がやってくるのは、これまでの舞台・田舎町ではなく、音が街の一部になっているNY。ルピタが演じたサミラは、世界が陥落する瞬間をサバイブしようとする女性。
「NYは私が暮らしている街だからよく分かるけど、無音になるなんて絶対ありえないし、間違いなく世界でもっとも騒々しい街でしょ? この設定を聞いたときは、コロナ禍を思い出したわ。本当に不気味だったのよ。鳥のさえずりが聞こえて、すごく遠くのサイレンがたまに耳に入ってくる……。あれはあのときだけでコリゴリ。静けさが自分の身を守る最大の武器であることを、サミラがどのタイミングで知ることになるか、楽しみにしててね」
6/28より公開中
『クワイエット・プレイス:DAY1』
text:MASAMICHI YOSHIHIRO
otona MUSE 2024年8月号より