CULTURE

【短期集中連載】
よしひろまさみちが
アカデミー賞をまじめに予想!vol.3
「今すぐ観られる配信作品」の巻

発表されましたねー、今年の米国アカデミー賞候補。季節柄~ということで、映画ライターのよしひろまさみちがめちゃまじめに分析(本職っぽいでしょ?)。短期連載やっちゃいます。 前回はすぐ観られる&ちょっと待てば観られる劇場用のアカデミー賞候補作を紹介&分析しましたが、今回は配信作。3年前の第91回アカデミー賞から一気に存在感を強めたネトフリやアマプラなどの配信作品ですが、今年は過去最多ノミネート。つか、全部門で考えると候補入りした作品の半分くらい、配信じゃね? って話になっております。
今年のアカデミー賞は配信作品花盛り 作品を分析する前に、アカデミー賞における配信作品の扱いについて。コロナ禍中、対象作品の基準を緩和して行われた昨年のアカデミー賞でもそうだったんだけど、主要賞、とくに作品賞は配信作品が受賞を逃すというジンクスがあります。純粋に投票数だけで選ばれている、と思いたいんだけど、配信差別にも見えるのよねー。なんせ映画は劇場で観るもの。家で観る作品はテレビの賞であるエミー賞だろ、っていう声もあるのよ。それもごもっともなご意見なの、わかりますよー。 だけど、NetflixやAmazonなど、製作スタジオを持つ主要配信社は、自社製作したものだけでなく、「すっげーいい作品だけど、配給会社が買ってくれない~」という作品の買い付けも行っておりまして。よりにもよって、そういう作品が主要賞候補入りする傑作だったりするのよね。たとえば3年前に監督賞を受賞した『ROMA/ローマ』とか。なので、芸術としては素晴らしいけど儲けが出なさそうな作品は配給会社はやってくれない=その手の作品は配信に集中。要は、配信が台頭した今、配給会社と興行(劇場)がタッグを組んだ旧来のシステムが問題となっているわけです。 この情報を頭に入れておいてね。なぜなら、今回の結果によっては時代が変わるかも、っていうのが今年のアカデミー賞の特徴なのよ~。 なんせ今年の候補作は配信作花盛り。Netflixだけでも過去最多の10作品、27ノミネート。主要賞候補の約半数がNetflix、Amazon、AppleTV+、Disney+で観られちゃう(ちなみに主要賞じゃないけど、短編ドキュメンタリー賞候補に至っては5作中3作品がNetflixよ)。ってーことは、それらが日本でも観られちゃう&一緒に予想できちゃうのですよん。 最多ノミネートは『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 大注目は最多ノミネートの『パワー・オブ・ザ・ドッグ』。主要部門で手堅いのは監督賞かなー。唯一の女性ノミニーだし、作品も文句なくオスカー向きだし。とはいえ、ゴールデングローブ賞では作品賞をとっているので、オスカーも今年を機に変わるなら、作品賞の最有力候補になります(が、例年どおりだったら、作品賞は逃します)。それと同様なのが同じく作品賞候補になっている『ドント・ルック・アップ』ね。これも作品賞以外の部門は有力。コメディってもともと作品賞は厳しめだしねー。

作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚色賞、美術賞、撮影賞、編集賞、音響賞、作曲賞
Netflix『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

story 粗野で武骨な牧場主フィル(B・カンバーバッチ)は、仲間の男達にとってのカリスマ的存在。弟(J・プレモンス)が家に迎えた新妻(K・ダンスト)と連れ子(K・S=マクフィー)に敵意をむき出しにする彼だが、次第に心境に変化が起こる。

監督:ジェーン・カンピオン/出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キルステン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、コディ・スミット=マクフィー ほか/Netflix映画/現在、Netflixにて独占配信中 ©Netflix

作品賞、脚本賞、編集賞、作曲賞
Netflix『ドント・ルック・アップ』

story 地球に衝突する巨大彗星を発見した天文学者ランドール(L・ディカプリオ)と大学院生ケイト(J・ローレンス)。彼らは大統領(M・ストリープ)に危機を直訴するのだが……。

監督・脚本:アダム・マッケイ/出演:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、、ジョナ・ヒル、マーク・ライランス、ティモシー・シャラメ、アリアナ・グランデ、ケイト・ブランシェット、メリル・ストリープ ほか/Netflix映画/現在、Netflixにて独占配信 ©Netflix

大混戦の俳優部門 混戦するのは俳優部門よ。この部門は作品賞ほど配信に厳しくないし、役者の芝居に対する評価だから、純粋に芝居さえよろしければとれちゃう。となると、『tick, tick...BOOM! チック、チック…ブーン!』『ロスト・ドーター』『マクベス』は皆さんで観て判断よ。

主演男優賞、編集賞
Netflix『tick, tick...BOOM! チック、チック…ブーン!』

story 夢に邁進しつつも何も成果を出せず、30歳になることに焦りまくるジョナサン・ラーソン(A・ガーフィールド)。彼はブロードウェイで一花咲かせようと躍起になるのだが……。

監督:リン=マニュエル・ミランダ/出演:アンドリュー・ガーフィールド、アレクサンドラ・シップ、ロビン・デ・ヘスス ほか/Netflix映画/現在、Netflixにて独占配信中 ©Netflix

主演女優賞、助演女優賞
Netflix『ロスト・ドーター』

story 休暇で海辺の街を訪れたレイダ(O・コールマン)は、ビーチで見かけたある母娘の姿をみて、自分の昔の姿を重ねてしまう。心の闇に触れてしまった彼女は、休暇を楽しむどころではなくなり……。

監督・脚本:マギー・ギレンホール/出演:オリビア・コールマン、ジェシー・バックリー、ダコタ・ジョンソン、エド・ハリス ほか/Netflix映画/現在、Netflixにて独占配信中 ©Netflix

主演男優賞、撮影賞、美術賞
Apple TV+『マクベス』

story スコットランドの将軍マクベス(D・ワシントン)は、野心から主君を殺して王位に就く。だが、内外からの重圧に耐えきれずに、彼は暴政に走ってしまい……。

監督:ジョエル・コーエン/出演:デンゼル・ワシントン、フランシス・マクドーマンド、ブレンダン・グリーソン ほか/現在、Apple TV+にて独占配信中

長編アニメーション賞候補作品は 配信でほぼ観られちゃう! ある意味、配信のためにあるんじゃないの? ってくらいに配信されている作品が多いのが長編アニメーション賞(ディズニー作品に関しては劇場で公開されたけど、公開まもなく配信スタート)。ここまで配信で観られるものが並ぶと、むしろ平和……。競争してる感なく楽しめるわよ~。前哨戦の様子をみていると、おそらく『ミラベルと魔法だらけの家』に軍配があがりそうだけど、ほんっと粒ぞろいなのよ。個人的にはピクサーの『あの夏のルカ』とNetflixの『ミッチェル家とマシンの反乱』がお気に入り。賞の行方を占うのに疲れたときは、この部門の候補作をちょいちょい箸休めにするのがいいわよん。

長編アニメーション賞、作曲賞、主題歌賞
Disney+『ミラベルと魔法だらけの家』

story 魔法の家に暮らすマドリガル一家。彼らは一人ずつ違った魔法の才能を与えられ、その力を地域のために使っていた。家族でただ一人、何の魔法も使えないミラベルも皆と仲良く暮らしていたが……。

監督:バイロン・ハワード、ジャレッド・ブッシュ/声の出演:ステファニー・ベアトリス、マリア・セシリア・ボテーロ ほか/現在、ディズニープラスにて独占配信中 ©2021 Disney. All Rights Reserved.

長編アニメーション賞
Disney+『あの夏のルカ』

story 北イタリアの港町では、漁民たちを襲うというシー・モンスターを恐れていた。一方、シー・モンスターの少年ルカは、親友のアルベルトと人間の世界に冒険に出る。

監督:エンリコ・カサローザ/声の出演:ジェイコブ・トレンブレイ、ジャック・ディラン・グレイザー ほか/現在、ディズニープラスにて独占配信中 ©2021 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

長編アニメーション賞
Netflix『ミッチェル家とマシンの反乱』

story 念願の映画学校進学が決まり、実家から離れることが決まった娘のため、ミッチェル家は家族水入らずのドライブ旅行へ。ときを同じくして、世界的IT企業が開発したロボットが人類を襲い始める。運良く逃げ延びた一家は、世界を救えるのか!?

監督:マイク・リアンダ/声の出演:ダニー・マクブライド、マヤ・ルドルフ、ジョン・レジェンド ほか/現在、Netflixにて独占配信中 ©Netflix

アカデミー賞短期連載、次回からは長年アカデミー賞授賞式の案内人をつとめてきたジョン・カビラさんに突撃取材。お楽しみに!

よしひろまさみち
オトナミューズのカルチャーページ編集担当&映画ライター。おバカなコメディからおマジメ社会派まで幅広くカバー。ほんとにおもろいもんしか紹介しません。

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