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よしひろまさみち

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ファッション界の革命児の栄光と転落、そして現在。ドキュメンタリー映画『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』レビュー

ジョン・ガリアーノ

ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ~。

よしひろさん、「きのう何観た?」
『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』

ジョン・ガリアーノ

story 2011年、ファッション界の大物デザイナー、ジョン・ガリアーノが一般人に対して暴言を吐いた動画が拡散。頂点を極めた彼だったが、一気に全てを失った。その事件前後には一体何があり、彼はどうして事件を起こしてしまったのか。彼の華麗なるキャリアを振り返るとともに、彼自身の言葉で全てを解き明かす。

監督:ケヴィン・マクドナルド/出演:ジョン・ガリアーノ、ケイト・モス、ナオミ・キャンベル、ペネロペ・クルス、シャーリーズ・セロン、アナ・ウィンター ほか/配給:キノフィルムズ/公開:現在、新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー中 ©2023 KGB Films JG Ltd

★ひとつのことが得意な方へ★

メゾン マルジェラ、恐ろしく人気ですよね。ちょっと前までは、かなりとんがったファッションフリークの間では超絶支持されていたマルジェラが、ここまで一般人気を得たのは、現在のデザイナー、ジョン・ガリアーノの功績と言われております。そんなガリアーノをご存じの方には有名な事件、よくご存じない方は絶対知っておいたほうがいい彼の凋落。それをつまびらかに描き出したドキュメンタリーが『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』です。


ロンドンのセントマーチンの卒業制作から注目を浴びて、あれよあれよという間にジバンシィ、ディオールのデザイナーに大抜擢されたガリアーノ。それまで「ちょっと懐かしい」というイメージだったブランドを一新したことは本当に有名なお話。スーパーモデルやトップ俳優からも引っ張りだこで、同時期を席巻したアレキサンダー・マックイーンとともにファッション界の革命児と呼ばれてました。が、暴言一つでキャリアは台なし。仕事を失っただけでなく、事件は有罪判決を受けて、頂点からどん底へ。映画よりも劇的な人生を歩んだガリアーノが、あの事件の前後、何があったかを自分の言葉で明かしてるの。


詳しくは申しません。これを観てわかるのはみっつ。切り取られた情報は鵜呑みにするな。ひとつのことしかできない人に多くのことをさせるな。そして、無知が一番の罪。ガリアーノってデザインの才能は神レベルだけど、事務仕事は全くダメなのね。しかも、ファッション以外の知識はかなり乏しくて、シャイゆえにわからないことを人に聞くこともできない人だったのよ。事件直前の時期に彼のまわりで起きたことが与えた影響があまりにもでかすぎて、壊れちゃってたのね。やらかしたこととその後の対応には同情はできないけど、「あぁ、こりゃ起こるべくして起きたことだわ」ってのがよ~くわかる! そして、この事情を全く知らなかったあたしらもどうしてたか、ってことを考えさせられるのよ~。


そういった教訓的なところも素晴らしくよく描かれているけど、ガリアーノの華麗なるキャリアのアーカイブがこれでもか! って出てくるのも最高よ。

ジョン・ガリアーノ

夢いっぱい時代のガリアーノさん

ケイト・モス

なんとケイト・モスさまのデビュー時のお話が!

ジョン・ガリアーノ

スーパーモデルばきばきに出てきます(アナ様も出るお)

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WRITER

よしひろまさみち/映画ライター

1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。

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