『ラ・ラ・ランド』のスタッフが本気でシモネタ炸裂映画を作ったら?『ディックス!! ザ・ミュージカル』レビュー【よしひろまさみち】
ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、本音でおすすめしますよ〜。
よしひろさん、「きのう何観た?」
『ディックス!! ザ・ミュージカル』
★シモネタOKな方へ★
シモネタ上等、下品も品のうち! と考えていらっしゃる方。いらっしゃーい。いま公開中の『ディックス!! ザ・ミュージカル』がまさにそれ! 典型的なミュージカル(突然歌って踊り始めるタイプ)なのに、シモネタだらけのため公式が「映倫が定めた本作のレーティングはR15+ですが本編には大変不謹慎で過激なシーンがあるため、18歳以上の鑑賞を推奨します」とわざわざつけてるくらいお下品でございましてな。一昨年のトロント国際映画祭で大爆笑したこれが、まさか品行方正な日本(!?)で公開されるとは! ということで、おかわり鑑賞してまいりました。
セックス三昧のイケイケリーマン2人がたまたま出会い、互いをライバル視するものの、生い立ちを聞けばどうも似てる……。「え、僕たち、双子じゃない〜!?」。全然似てないし、んなはずあるかいな、って話なんですが、そんな2人が結託して離婚した両親を復縁させようとするドタバタ喜劇。なんせ素晴らしいのが尺。86分なの! もうこの時点で傑作。ミュージカルって歌のパートを切れないからどうしても長くなっちゃうのに、この尺に収めちゃうなんて。なのに内容もバッチリ濃い目。『グレイテスト・ショーマン』や『ラ・ラ・ランド』のスタッフが作ってるんだけど、じつはこれには元となる30分ほどの舞台がありまして。そのときの最大のテーマが「ゲイの役をストレートが演じる論争があるけど、だったらストレートの役をゲイが演じたらどうなる?」だったのね。もうこれだけで不謹慎。だって社会的問題にもなったその論争を逆手にとってるんだもの。しかも笑いと感動しかないの。お下品な小ネタの数々は観てからのお楽しみよ。
WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。