「ファッションは“偏愛”と“面白い”がこれからのキーワード」【スタイリスト白幡啓連載】
“偏愛”と“面白い”がこれからのキーワード

コミュニケーションディレクター 中河レナさん「昔の販売員さんは本当に面白かった!」
K そういえばスタイリストを始めたばかりのころ、名物編集者に好きなブランドを聞かれて「ビームスとアルバローザ!」って答えたら、「アナタ面白い!」って言われたことを土井地さんとお会いして思い出した(笑)。セレクトショップっていうカテゴライズがなかった時代に、セレクトしたインポートを置いていたからビームスって好きだったんですよね。
R セレクトとサーファーの両極端のブランドが好きだったなんて、さすがおケイ先生! ビームスといえば、今も昔も個性豊かなスタッフが多い印象。ファッションはもちろん、マニアックな趣味の世界も極めているイメージがあります。
D いろいろなスタッフがいるんだよね、ウチ(笑)。以前、某雑誌から自転車好きを探していると連絡があって、全国の店舗に聞いてみたんですね。そしたらすっごくマニアックな自転車を愛用している人がたくさんいて。ビームスには何かに精通した、オタク気質のスタッフが本当に多いかも(笑)。
R まさにまさに! 今までもそうでしたけど、これからはさらに偏愛×時の共有が大切になるのかなと。昔って、名物販売員さんが商品のマニアックなネタを教えてくれたり、行きつけのお店で「秘密ですけど絶対似合うやつが入ってきましたよ」ってこっそり連絡をくれたりして。ただモノを売るというよりも、パーソナライズされたサービスがそこにはあって、正直面倒くさい部分もあったんですけど(笑)、その面倒くさいところも含めて面白かったんですよね。時代に作られた正解のある消費より、一期一会の出会いや、いい意味での違和感を楽しめる場ができたら、売る側も買う側も幸せなんじゃないかなぁと思います。
D ネットも否定しないし、僕もよく利用するけど、人から買いたいなって最近は思う。誰から買うか、どこで買うかというようなことも含めたストーリーを理解した上で手に取るモノって、便利なネットショッピングで買ったモノとは違うから。あと、なんとなく思うのは、コロナ以降は〝やっぱり〟という言葉のもと、「やっぱりライブがいいよね」とか、「やっぱり洋服はお店で買うほうがいいよね」ってなっている。だからこそレナさんが言うように、販売員の在り方もこれからのポイントになってくると思うんだよね。
K 私は売る側が一方的に提供する時代は終わったと思っていて、これからは面白く売って面白く買う時代になってくると思うの。買う側が「これは面白いからお金を出して買ってもいいよ!」っていうふうにならないと、モノを売るのはどんどん厳しくなっていく気がするんだよね。そしてファッションって面白い! って思えるようなことを土井地さんとレナさんとはできると思うから、面白いことをどんどんやっていきましょ!
D&R ぜひぜひ!
ビームス 執行役員
シニアクリエイティブディレクター 土井地 博さん
ショップスタッフを経て、20年以上にわたってビームスの宣伝、PR業務を行う。現在はビームスのディレクターを集結させたディレクターバンクの室長や出雲観光大使、ラジオパーソナリティ、大学非常勤講師など、幅広いフィールドで活躍中。
コミュニケーションディレクター 中河レナさん
アパレル&ライフスタイルの小売業界を経て、スタイリストの風間ゆみえさん主宰のウェルネスコミュニティ「ROOMYS」の運営などを中心にディレクターとして活動中。カタチがないものを言語化・立体化するのが得意で、おケイ先生も絶大な信頼を寄せている。
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photograph:TOMOYA YAMASAKI text:KYOKO CHIKAMA
otona MUSE 2025年4月号より
EDITOR
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