「都会育ちの洗練と無邪気な野性み」メイキャッパーUDAが映し出す俳優兼ダンサー、石橋静河の魅力
BEHIND THE SCENES
降り注ぐ太陽の下で始まり、終わるころには三日月が浮かぶ、豊かな時間が流れていた撮影。“素の石橋静河”を見たかったと話すUDAさんと、からだを通して表現した石橋さん。ふたりのまなざしが交差した舞台裏をお届け。
しなやかなからだに宿る無心のエネルギー
今回の「IN THE BACK」でUDAさんがパートナーに迎えたのは、俳優であり、コンテンポラリーダンサーとしても表現の幅を広げてきた石橋静河さん。ふたりの出会いは数年前。ニューフェイスの俳優として紹介されたころ、UDAさんは雑誌の企画で静河さんと初めて出会った。コンテンポラリーダンサーでもあるということで話が盛り上がり、いつか撮影がしたいねと話していたものの、なかなか実現には至っていなかったという。そんななか、数年前に彼女のダンサーとしての舞台を観劇する機会があり、深い感銘を受けたそう。
「舞台で彼女の踊りを観たときのことが忘れられないんです。まるで獣のように、無心で動いていて。すごく綺麗で、けれどどこか危うくて、それが非常に魅力的でした。ただ踊るのではなく、からだが自然と動き出すような、湧き上がる衝動に身を委ねるような瑞々しさに満ちていました。ああいう瞬間は、役者として、ダンサーとして、これまで培ってきたものを全て脱ぎ捨てたときにだけ立ち現れる、強くてピュアなエネルギーなんだなとその時強く思いました」
「今回の撮影では、役者としてもダンサーとしても、からだとストイックに向き合う表現者としてのパーソナリティと、舞台で感じた彼女のピュアな魅力を中心に伝えたいと思いました。そんなことを考えながらイメージを探しているときに思い浮かんだのが、マックイーンの2004年の春夏コレクションと、そのモチーフとなっていたモダンダンスの母とも呼ばれるイザドラ・ダンカン。型に囚われず、洗練されきらない動きで踊ることを再定義した彼女のダンスの魅力と、ドレッシーな服をまといながら感情のままに踊り狂うモデルたちの姿がすごく印象的で。それがヒントとなって静河さんのイメージと重なり、彼女の芯にある“無邪気さ”が引き出せるんじゃないかと思いました。撮影では、彼女は大人だけど自由で野性的で、子どものように夢中になれるきっかけが必要だと感じました」
撮影前、何度も構想を膨らませていたUDAさん。今回のフォトグラファーの熊谷勇樹さんに相談したところ、静河さん自身の持つしなやかさと無垢な部分を際立たせるには、夕暮れのような柔らかな光が必要、となった。
「撮影のイメージをスタイリストの小嶋(智子)さんに伝えて相談を重ねたところ、予想を超える形で彼女の中の夢と現実を絶妙に縫っていく素敵なスタイリングを提案してくれました。静河さんの都会育ちの洗練と無邪気な野性みと、洋服が持つ軽やかなロマンティシズムのマッチ。さらに今回その世界観に神話的メタファーで、夢見心地の世界に広がりを添えてくれたのが(フローリストの)大和(佳克)くんでした」
結果としてカメラに映ったのは、風や光と戯れるように軽やかにからだを動かす静河さんの姿。内から湧き上がる感情が、衣服の動きと一体になって画面に刻まれた。
「最後の1カットで、踊りきった後にふっと素になった瞬間の表情が撮れたんです。彼女ってすごく大人でもあって。真面目だし、空気も読む。でも、その内側には絶対に子どものような感情がある。だから今回は、そういった社会性や理性のフィルターをある意味取っ払った“素の石橋静河”に出会ってみたかった。今回の撮影で僕が見たかったのは、まさにああいう表情でした」
どこまでも自由に、けれどどこまでも誠実に。UDAさんが石橋静河さんという存在に寄り添いながら引き出したのは、からだそのものが語りかけてくるような、確かな物語だった。
コート¥3,911,600、チョーカー¥174,900、(全てアライア/リシュモン ジャパン合同会社 アライア)
コート¥3,911,600、チョーカー¥174,900、(全てアライア/リシュモン ジャパン合同会社 アライア)
ドレス¥613,800、チョーカー¥202,400、ネックレス¥262,900、バングル¥138,600※参考価格、リング¥50,600、ブーツ¥264,000(全てクロエ/クロエ カスタマーリレーションズ)
Profile_UDA(うだ)/大手化粧品会社にてPRやマーケティング、教育、店頭プロモーションなどさまざまな業務に携わり、その後独立。現在は国内外のエディトリアル、コスメティック、ファッションのキャンペーン広告、ショーなどのメイクアップを担当。2021年に日本の季節にフォーカスした初の著書『kesho:化粧』(NORMAL)を刊行し、話題を集めた。
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この記事の画像一覧
direction & make-up:UDA[mekashi project]
photograph:YUKI KUMAGAI styling:TOMOKO KOJIMA
hair:WAKA ADACHI [eightpeace] flower:YOSHIKATSU YAMATO
model:SHIZUKA ISHIBASHI edit:MIYU SUGIMORI
hair:TOMOHIRO OHASHI[M-rep]
model:MIKAKO ICHIKAWA
interview & text:MIYU SUGIMORI
coordinate:YU TAKAHASHI[TSUBAKI SHA]
otona MUSE 2025年9月号より
EDITOR
37歳、輝く季節が始まる! ファッション、ビューティ、カルチャーや健康など大人の女性の好奇心をくすぐる情報を独自の目線で楽しくお届けします。