比留川游ちゃんがリアルアバターに変貌!? おケイ先生と考えるメタバース【スタイリスト白幡啓連載】
「未来の花嫁はどちら側にいますか」
2023年2月。世の中の流れの速度がどんどん加速している。こんなに進んで 一体どこに辿り着くのか?
私たちのやり取りひとつを取っても、手紙を書いて送って(自力でも他力でも)届いて返事が来るのを待つ、この時間が省略されていく。記憶の中ではその時間は意外と人として必要な要素が詰まっていたのでは? と思う昨今だが、ちょうどこの企画の撮影時1月末くらいに携帯電話のアプリですごく流行り出した“アバター作成”の機能。自分の写真を枚選んで待つこと40分、私の面影がほぼない美しいアバター化した画像が100枚程でき上がる。話によれば、今はこの画像を元ネタとして美容整形などに使われているらしいけど(それも恐ろしいけどね)、将来は......?
最近有識者と呼ばれる人々からよく耳にする「metaverse(メタバース)」という言葉。meta(超)+universe(宇宙)の造語で、インターネットを介して利用する仮想空間を指す。仮想の世界で自分のアバターを作り出し、その中で生活もできるようになるのだとか。要はたまごっちの中のひよこに自分がなるようなもんなのか? 既に大きな企業やゲームの世界では利用されている。
だけど、自分の生活が、もしその中限定になったとしたら? そっち(仮想)の世界ではご馳走に舌鼓を打っている私が、こちら側では栄養剤の点滴だけで大丈夫だったり、そっちでは恋愛も結婚も順風満帆なのに実際はひとりぼっち......もあり得る。どんな世界でも、どうせ小競り合いが起こるのならば、私は湿度も温度も感じたいし、それを飲み込みたい。人を好きになるのなら口から心臓が飛び出るような瞬間や砂を噛むようなコントロール不能を感じたい。、私は湿度も温度も感じたい
それも可能です―なんて日も来るのかもだけど、私の温度を知られてたまるか、とも思ったりする。ふと、かつてのアイドルの歌が頭をかすめる。友だちの結婚式に出席しているカップルの女の子の心情を歌ったもので、友だちを祝福しつつも、あなたの未来の花嫁は隣にいるからね! と、彼を横目に結婚への想いを馳せるというものだった。私も便乗してよくカラオケで歌ったもんだわ。ただ、その隣と今の隣とは、意味合いが違ってきているのだが、いつか、もし隣にいられなくなるときが来るのなら、今はまだそちら側との 距離がちゃんとあるうちに、隣にいる人に触って温かさを確認して、音を聞いて耳に焼き付けて、においを嗅いで記憶に結びつけて、カプリッと噛んでみたその感触も全て自分のからだの細胞の記憶に叩き込んでおくのがいい。仮想の世界では何でも再生可能になるのならば、その再現度を上げるためにきっと役に立つはずだから。
まだ見ぬ想像の世界への一縷の願いを込めて......。
-白幡 啓
photograph_KATSUYA NAGATA[aosora] styling_KEI SHIRAHATA[LOVABLE] hair&make-up_MIKAKO KIKUCHI[TRON] model_YU HIRUKAWA