「自分をカッコイイと思いながら死んでいく生き方にしたい」注目ブランド「MIKAGE SHIN」とは?
先日セレクトショップの展示会で目を引いたのは、珍しい手法で染められた一本のデニムパンツ。聞けば日本人の女性デザイナーが手がけている「MIKAGE SHIN」というブランドのものだという。エッジが効いているのに、普段シンプルな服装しかしない人でも着ているイメージがつく、そんな不思議な魅力のあるアイテムが揃うこのブランドについて調べてみると、デザイナーの経歴もとても面白い。そこで今回は「MIKAGE SHIN」デザイナーである進 美影さんに取材をオファー。ブランドに込められた思いや、広告代理店を辞めデザイナーへと転身した彼女自身についてたっぷりと話を伺ってきました。
着る人をエンパワーメントし、語りたくなる服を作る
「MIKAGE SHINというブランドは2019年10月にニューヨークで創設をしました。その当時からコンセプトは変わらず『個人の強さと知性を引き出す』を掲げています。ジェンダーレス、エイジレス、ボーダーレス、あらゆるステレオタイプにとらわれない服作りをモットーに、個人の自由な創造性であったり、アートや 知的構造とエンパワーメントすることを目標にしています」
「個人的に“語れる服であること”が最も大切で、服に生きざまがあることがすごく重要だと思っています。洋服なら一着5,000円でいいものが買えるこの時代に、多くの人が何万円とする服を買う意味は、それがただの服ではなくアートピースだから。やっぱりそこに魂やストーリーが込められていて、手に入れたいと思うような、リスペクトできる服だから購入するんだと思うんですね。そういった服を持っている自分に自信が持てたり、いい服を着ているとそれに見合う人間になれた気がして勇気が出たり、服はそうやって人に対して生きざまを与えられる存在だと思うから。表面的に素敵な服もデザイン面では重要ですが、さらにそれを着ている人の人生をいかに幸せにできるかっていうところを大切にしたいと思っているんです」
一見すごく複雑に見えて、実際は洗練されミニマルに落とし込まれたデザインは、彼女の服作りのプロセスによく似ている。
「コレクションを組み立てていくときに、まずはアートや写真、音楽や映画など、あえて非言語的な感覚に頼り、今の自分のムードってどういう感じだろうと考え始めることが多いです。音楽を聴きながら、こういう流れるシルエットの服を着たいなとか、そのときの自分に心地のいいものを探します。そうやって視覚や聴覚など多方面から自分のクリエイティブインサイトを汲み上げて、コレクションに落とし込んでいくんです」
「でもそれらをまとめるには語彙力が必要になります。自分のなかで言葉の表現の幅が広がるほど何を考えてるか的確に伝えることができるから……。やっぱり言語化をすることが大事だなと思うので、本を読んだり、それこそアーティストの図録を読んで言葉を使った表現の仕方を学んでいます。あとは、人とのコミュニケーションが好きでたくさんの人の考え方を知りたいと思うので、なるべく普段からさまざまな人と会話をするようにしています。話をしながら、それぞれの人生の歩き方があるから、じゃあこういう服があるとエンパワーメントできるなと想像を働かせます。外交的な部分と内向的な部分のクリエイティブ、それら全てを自分なりに消化して、毎シーズンひとつに収斂していく感じですね」
photograph:KAORI IMAKIIRE text:KOTOMI TAKAHASHI