「自分をカッコイイと思いながら死んでいく生き方にしたい」注目ブランド「MIKAGE SHIN」とは?
服を通して、人とカルチャーを繋ぐ存在に
ブランドやそれぞれのアイテムに対する底知れない思いは、オンラインサイトのアイテムひとつひとつにつづられたキャプションの熱量の高さからも見て取れる。
「私はストレートにファッション業界へ入ったのではない分、知らないことが多いんです。でも服ってこういう生地でできていて、産地はどこであるとか、知れば知るほど面白くて、私以外の人にもそういった体験をしてほしいと思っています。デザイナーズブランドって、アウトプットが違うだけでアートピースだと思っています。なぜならやっぱリスペクトされる作品であるからです。私はさらにカルチャーの器であってほしいと思っていて……。単に可愛いから着るだけじゃなくて、このブランドの今季のコレクション、こういうアーティストから影響を受けているんだ、じゃあその音楽を聞いてみようかな、というように、ファッションを通じていろいろなカルチャーを知ることができる場所だと思うんです。ブランドを訪れた人と、私が面白いと感じたカルチャーを繋げられたらなという思いでキャプションを書いています。服を通して興味が広がっていったら、やっぱりデザイナーの服が存在してる意味があるなと思えるんです」
さらにキャプションを読んでいると、日本の貴重な技術が惜しげもなく取り入れられていることを知り、自分自身がまだ知らない素晴らしい自国の技術に驚かされる。
「日本の技術や伝統工芸に目を向けるようになったきっかけは、2017年から2019年までニューヨークのパーソンズ美術大学に通っていたときに、現地の友人に『君は日本語ができるから、日本の特殊な技術を持つ職人さんにリーチできるのはずるい、アドバンテージだ』と言われて。確かに、メゾンのブランドがわざわざ日本の和歌山県のエコファーを使用したり、日本の企業でジャカード織りの生地を作っていたり。日本にしかない貴重な技術を求めて訪れる海外の人が多いことを知り、これらはファッション業界だけでなく、文化圏としても非常に重要な技術なのではと思うようになりました。使われないと、貴重な技術も残っていかないので、私がブランドで使用することで職人さんの技術を残しながら、 自国の貴重なファッション産業にも貢献できたらなと思っています」
photograph:KAORI IMAKIIRE text:KOTOMI TAKAHASHI