木津明子のこども食堂日記vol.7
JR根岸線、横浜駅から約20分の洋光台駅。駅前のまちまどレンタルスペースの中に、「こども食堂レインボー」はあります。オープンは月に2日。昼ごはん30食、夜ごはん30食。
ずらりと並ぶカラフルなお惣菜、お魚とお肉のメインディッシュのワンプレートごはん。日によってメニューは変わりますが、家庭的で親しみやすく、栄養価の高い食事をいただくことができます。広めの廊下では子ども達が指揮をとって、わたあめやかき氷など食後のちょっとしたおやつを作ったりしています。
2021年8月に「こども食堂レインボー」は開店しました。店主は『otona MUSE』はもちろん、モード雑誌からタレントのスタイリングまで幅広く活躍しているスタイリスト木津明子さん。売れっ子スタイリストである彼女がなぜ、こども食堂をやってみようと決心したのか。vol.1では、開業に至るまでの過程を木津さんからお話しいただきました。vol.2から、こども食堂へお手伝いに行っている編集・ライター 柿本真希が「こども食堂レインボー」を様々な角度からお伝えしていくことになりました。
vol.7は、「こども食堂レインボー」が使用している「Lefts,」のエプロンについて。
「こども食堂レインボー」に寄付してくださった「Lefts,」のエプロンは、滋賀県の薔薇農園「WABARA」の薔薇をつかったRose Kitchen(Paris)とのスペシャルコラボレーションから2色。右は“友禅”の花びら、左は落とした、薔薇の茎や葉。それぞれが好きなエプロンをしていた「こども食堂レインボー」。けれどある日「みんなで揃えた方が団結感、清潔感があるのではないか」という話になり、エプロンを探すことに。メインメンバーのひとりが素敵なエプロンがあると発見し、HPのコンタクトからご連絡をさせてもらったことがキッカケです。共感していただき、2色のエプロンとバンダナを寄付してくださいました。
その「Lefts,」主宰の道田さんに、今回お話を伺いました。
木津さん「主要メンバーの友人から教えてもらって出会ったLefts,のエプロン。こども食堂と同じく何かしらの理念を持って作っているブランドがいいと思っていたのですが、それと同時に「理念は大事だけれど、まず見たり身につけただけで気分が上がるものがいいよね」とも話していたんです。Lefts,のエプロンは本当に色が綺麗!」
道田さん「嬉しいです。まず、かわいい!!!と選んで欲しいと思って作っています。このエプロンは完全に自然から出ている色。自然の色って誰にでも似合うと思っています」
木津さん「このエプロンを作ることになったキッカケを教えてください」
道田さん「低温圧搾でじっくり絞ったコールドプレスジュースを作っているsunshine juiceのノリくんと友人なのですが、搾りカスがとてもたくさん出るからこれを使って何か作れないかなと相談をもらったんです。食べ物に近い製品と考えた時、1番作るべきはエプロンなのでは? と。そこで、その搾りカスを使って染めたエプロンを作りました。1年向き合って大切に育ててきた農作物も、食べると一瞬でなくなってしまう。それって儚いことだし、一方ではとても美しいことだなあ、と興味深い気づきがありました。それを日常に存在としてとどめておけたら面白いなぁと思っていました」
木津さん「こんなに鮮やかに綺麗な色が搾りカスから出るなんて、びっくりしました。こども食堂レインボーはもちろん理念はありますが、働いている人も絶対に楽しくハッピーでいられる場所でありたいと思っていて。この鮮やかな色はそのムードにピッタリでした」
道田さん「何もかも欲を捨てて理念だけを持ってやっていくというのは、私の目指すところではなく、そことは関係なくまずはPOPであること、かわいい! と直感で感じることができる製品を提案するのが大切だと思ってつくりました。こども食堂レインボーで使ってもらっているのは、唯一無二の薔薇から作られたピンクとグリーンの2色です」
木津さん「自分がわからないと少しでも感じたことは、箱にまとめてしまう人が多いと思うんです。だからこども食堂レインボーも“いい人”ってまとめられてしまうことが多くて。私たちも楽しいからやっているんだよ、と一生懸命説明するんですが、1度箱に入れられてしまうとなかなかうまく伝わらなかったりします」
道田さん「そういう感じすごく分かります。このエプロンも7、8年になりますが、いつでも何かを決めるときは“自分が好きだと思うかどうか”を軸にしています。頭で無理やり納得させるより、直感でいいなと思ったり好きだと感じればそれが大事なのではないかと思っています」
木津さん「きっとそんなにたくさんの数も作れないですよね」
道田さん「搾りカスから染めているので大量に作るのは難しいですね。というか、そもそも大量に作る気があまりなくて(笑)。長く続けていけるよう、身の丈にあった動きを心がけています」
木津さん「そうなんです。私たちもずっと長く続けていけるには? とよく考えていて。無理だけはしないようにしています。ビジネスとして成り立たせていかないと続かなくなってしまう」
道田さん「そうなんですよね。続けていける体制で向き合うことこそが、自分がやる意味が生まれると思っています。それに、“持続可能かどうか”は、今も昔もとても大切に向き合うべき課題であるけれど、自分がやる意味がなければ続かないですから」
木津さん「見た目でとても気に入って、こうして色々話すとさらに共感できるエプロンに出会えて嬉しいです。道田さんはどこに共感してくださったんですか?」
道田さん「少しだけ重たい言い方になってしまいますが、生まれてくる子どもたちはみんな等しく教育を受けられるべきだと思っているんです。教育というのは、知恵や知識、経験などのこと。そして、教育の元々の根源は、愛だとも思っていて。だから子ども食堂にはとても興味があったので、HPからご連絡いただいたときは嬉しかったです」
木津さん「本当に嬉しい。やっている人たちが本当にやりたくてやっていて、求める人たちがいる。それだけで透明性があるというか、必要な事柄なんだと思ってやっています。いつかLefts,のエプロンとこども食堂レインボーのコラボエプロンが作れる日がくるといいなぁと夢見ています。道田さんはこれから何かやりたいことはありますか?」
道田さん「コロナや戦争が重なり、物が無いという状況が増えたと思うんです。そういう中で、全部自分で0から100まで出来たらいいのになぁと思って。そんな違和感や模索があった中で、いずれこのLefts,の製品の原料となることを夢見て、福島県でリネンの畑を始めました。これがどんなことに繋がっていくのかは分からないけれど、何となくいい予感はしています」
木津さん「畑をキッカケに色々なことが繋がって生まれていきそうですよね。その続きをまたお聞きしたいです。私たちも負けじと進んでいかなきゃ。これからも宜しくお願いします!」
「Lefts,」
全ての工程において慎重に選び考えぬいたユニークなプロダクトを通じて、環境に対する、より多くの責任をもって生きることの喜びと利益を明らかにしていくためのプロジェクトが「Lefts,」です。2015年、100%ボタニカルダイでエプロンやバッグなどを製作することからスタートしました。
photo&text:MAKI KAKIMOTO
otona MUSE K