息子からの「赤ちゃんってどうやってできるの?」には、どう答えるのが正解?【初めての性教育】
勃起、性欲、自慰のこと。話していいの?
男の子が“性”について自覚し始めるとき、それはたいてい静かに訪れる。言葉にするには早すぎて、でも身体は確かに何かを感じている。そんな時間がある。「勃起や自慰などの話題も、隠すのではなく“自然なこと”として受け止める姿勢が大切です。自慰行為は成長の一環であり、無理にやめさせる必要はありません。ただし、衛生面や場所については丁寧に伝えることが重要です。『トイレや自分の部屋など、一人になれる場所でしようね』『清潔にすることが大事だよ』といった具体的な伝え方が、子どもにとっての安心につながります」
子どもは、自分の身体の変化に戸惑っている。そのときに“否定”ではなく“理解”をもって接することができたなら、その後の関係性はきっと変わる。実際、日本財団が行った「18歳意識調査」(2021年:第39回-性行為―)では、学校での性教育について「抽象度が高いと思う」が65.6%、「避妊方法を具体的に知りたかった」58.1%と「性の知識」の子ども(18歳はもはや成人だが)の需要と大人からの供給が微妙にアンバランスだ。さらに日本財団による18歳意識調査(2018年:第6回―セックス―)ではマスターベーションの経験について89.8%の男性が経験アリと答えている。つまり、多くの子どもたちは、最も身近なはずの親と大人と、“性”について話す機会を持てないまま大人になっている。だからこそ、小さな問いかけや会話を恐れず、まずは日常の中で“話せる空気”をつくっていくことが、将来の信頼や安心の土台になる。
“性”という言葉に、いやらしさを感じるのは、大人のフィルターかもしれない。子どもたちは最初、ただの「なぜ?」から始めているのだから。「“性”を“いやらしいもの”として伝えるのではなく、“命や人を大切にすること”として伝えることが大切です。性教育の本質は、“自分を大事にし、他人も大事にする”という人権意識の育成にあります」
だからこそ、たとえば“見せない・さわらない・さわらせない”という原則は、小さなころから繰り返し伝えるべきだと平山先生は語る。そしてスマホより先に、親が教えようと先生は続ける。「今の子どもたちは、スマホやSNSを通して、性に関する情報に早くから触れる可能性があります。そのとき、正しい知識がないまま受け取ってしまうと、偏った理解や不安を生む原因になります」。そう、“ネットより先に親が教える”という姿勢が、大きな安心につながるのかもしれない。フィルターアプリよりも、何より強いのは「どんな話題でも、ママに聞いていいんだ」という空気。それをつくるには、日々の何気ない会話の積み重ねしかないのだ。

平山和秀/国立大学法人 熊本大学医学部卒業後、聖路加国際病院にて外科系初期研修医を経て京都大学附属病院泌尿器科に入局。泌尿器科専門医・指導医、がん治療認定医、ロボット手術ダヴィンチ免許を取得し、欧州泌尿器科学会、米国泌尿器科学会、世界泌尿器科学会に3年連続採択。アメリカで最も権威のある泌尿器科雑誌『UROLOGY』に論文出版する傍ら、形成外科医として美容医療に従事。『専門分野である男性器治療・性同一性障害・AGA(薄毛治療)の分野で安全で質の高い医療を提供したい』とカズ博多クリニックを開院。日本男性器学会理事長や日本初の男児向けデリケートゾーンケアクリーム『キレイにむけたね』を展開する秀和製薬代表取締役社長を兼務。
illust:YAECHIN
EDITOR
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