アメリ、赤いカフェの椅子、クリームブリュレに憧れて…【パリ】旅でカルティエに入れなかった日
憧れのカルティエ。
心臓がドクンと鳴った。
30歳を目前に、がんばってきた自分にご褒美をあげたいと目論んでいたことを思い出す。カルティエが生まれた国でカルティエを買う。そんなドラマチックなことを今このタイミングでやるのはどうだろう。
目の前の建物は重厚な石造りで、守られたようなその佇まいが、近づくほどに静かな圧を放っている。その圧に気づかないふりをして、一歩近づくと、ショーウィンドウのガラスにふいにうつった自分の姿が、思っていた以上にずっと幼くみえた。
カルティエはまだ、自分には似合わない。
そう確信めいてしまったわたしは、途端に恥ずかしくなって、扉に手を伸ばす勇気が出ず、通りすがりのふりをしてその場を離れた。

photograph & text:MISATO SHIMIZU
WRITER
タレント・モデル・俳優
清水みさと
タレント、モデル、俳優など幅広く活動。サウナ好きが高じて、「サウナイキタイ」のポスターをはじめ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務めるほか、TRANSIT「世界のサウナ巡礼記」、るるぶ「あちこちサウナ旅」、リンネル「食いしんぼう寄り道サウナ」、オレンジページ「本日もトトノイマシタ!」など多数の連載を担当。









