アメリ、赤いカフェの椅子、クリームブリュレに憧れて…【パリ】旅でカルティエに入れなかった日
ルーブル美術館、エッフェル塔、セーヌ川。どこを歩いても頭の片隅からカルティエが離れなくて、それなのにどうしても勇気が出なかった。そうやってグズグズしているうちに、あっという間に3日が経ち、結局わたしは何も買えずに帰国した。
それから一年後、わたしは20代を終えて、30歳になっていた。
夏の暑い日、たまたま麻布台ヒルズのカルティエの前を通りかかった。あの日、入れなかったカルティエ。なぜかわからないけど、その日、勇気とかタイミングとかそういう言葉を飛び越えて、気付けば扉を開けていた。

鏡の前で試着したのは、ずっと憧れていた「クラッシュ ドゥ カルティエ」のリング。指にはめた瞬間、心臓の音がすこしだけ早くなった。思っていたより重くて、思っていたよりしっくりきて、わたしはその場で即決した。
自分にとって初めてのカルティエ。身につけるものの中で、一番高価なお買い物。
背伸びをしてでも、「似合うようになりたい」と思えるものを選ぶということ。それはきっと、いまの自分を信じてあげる行為でもある。
似合うまで待ってたらキリがない、なりたいと思うからなるんだしって言い聞かせながら少し背伸びをしたこの日、またひとつ自分のことを好きになれた気がした。

パリでお店に入ることすらできなかったカルティエ。次にパリへ行くことがあったら、29歳のあのとき、カルティエに入りたくても入れなかった自分を迎えに行きたい。
たった一年、されど一年。
相変わらずわたしの前髪はオン眉だし、学生に間違われることも多いけど、大人のふりをしながら少しずつ、憧れを現実に変えていければいいな、なんて思っている。
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photograph & text:MISATO SHIMIZU
WRITER
タレント・モデル・俳優
清水みさと
タレント、モデル、俳優など幅広く活動。サウナ好きが高じて、「サウナイキタイ」のポスターをはじめ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務めるほか、TRANSIT「世界のサウナ巡礼記」、るるぶ「あちこちサウナ旅」、リンネル「食いしんぼう寄り道サウナ」、オレンジページ「本日もトトノイマシタ!」など多数の連載を担当。
















