「ザッハトルテ」発祥の地【ウィーン】で、20か国を旅した2025年を振り返る|清水みさと連載
ふつうに、行きすぎたなと思った。半年前の6月の時点で、すでに「行きすぎ!」と言われていたのだから、今さら驚くことでもないけれど、それでもこうして書き出してみると、ようやく実感が追いついてきた。
わたしは、好きなこととなるととことん夢中になる性質で、物を買うより、どこかへ行くことに心が動くほうだ。だから旅をするたび、ほんとうに仕事を頑張ってよかったと心底思うし、来年もわたしはきっと働くたびに、旅したくなる。
自分の行きたい気持ちがはっきりしてくると、立ち止まる選択も悪くないと思えてきた。今向かっているサウナは、チェコの国境まで歩いて20分。うっかり行ってしまいそうな距離にある。なんなら今の今まで、ちょっとだけ行こうとしていたけれど、やっぱりやめようかなと思った。
21カ国。その数字が、ふいに主張をし始めて、旅より先に数のほうが浮かび上がってきた。
わたしは、国の数よりその土地でちゃんと心を使いたい。だから、散歩みたいに通り過ぎるだけの場所を、思い出が詰まった今年の旅に並べるのは、やっぱり違う気がして、チェコは来年、そうとっさに自分に言い聞かせて、真っ白な窓の外を見た。

来年行きたい国を数えてみたら、もう両手じゃ足りなくて、ああ、わたしは本当に懲りないなぁと思う。でもきっと、その懲りなさが、わたしを今日まで連れてきてくれたわけで、だからまぁ、みんな多めにみてよってことである(なにが)。
やっぱりわたしは、旅をせずにはいられなくて、そんな性分ではじまったこのエッセイだし、こんな自分にやさしいタイトル、なかなかない。

電車に揺られながら、考えて、腑に落ちて、決めて、手放して、あちこち思いを巡らせていたら、どうやらまもなく着くらしい。外は相変わらず真っ白で、ほとんど動いてないようだったけど、わたしの内側はずいぶん旅をしたっぽい。チェコを遠目に、ここまでが今年の旅になるよと自分に言い聞かせた。
うん、悪くない。
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photograph & text:MISATO SHIMIZU
WRITER
タレント・モデル・俳優
清水みさと
タレント、モデル、俳優など幅広く活動。サウナ好きが高じて、「サウナイキタイ」のポスターをはじめ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務めるほか、TRANSIT「世界のサウナ巡礼記」、るるぶ「あちこちサウナ旅」、リンネル「食いしんぼう寄り道サウナ」、オレンジページ「本日もトトノイマシタ!」など多数の連載を担当。





















