「世界でもっとも至福のしごと」とは? スタイリスト古田千晶さんがマタニティウェアを作る理由
「選ばれるマタニティウェア」を作る古田千晶さんの頭の中
みなさんは、「世界でもっとも至福のしごと」と聞いてなにを思い浮かべますか? 不労所得で生きていける大富豪? 美男&美女を間近で見放題のK-POPアイドルのヘアメイクさん? 自分の感性を多くの人に認めてもらえて、それを武器に稼げる人気ユーチューバー? 浮かぶ答え十人十色かと思いますが、今回のゲストでありgreenome(グリーノーム)ディレクター古田千晶さんの考える正解は「母親」です。
―この秋でもう2周年を迎えたんですね。おめでとうございます。改めて伺いたいんですが、そもそもどんな経緯でgreenome(グリーノーム)を始めることになったんですか?
FURUTA
思い立ったのは、もう8年前になる自分の初産。31歳で長女を生んだときですね。妊娠中から蕁麻疹などの肌トラブルで着たい服が一切着れなくなってしまった時期があって。素材にこだわって選ぶと、デザインが納得いかなかったり、授乳や育児でサッと動きにくかったり。その一時期だけだし、我慢すればやり過ごせてしまうのかもしれないけれど。スタイリストという仕事柄、妊婦のときも産後も着る服に妥協できない部分が多々ありまして(笑)。
―我慢できなかった?
FURUTA
すごく探したんですが、なかったからじゃあ自分で作れないかなって。女性なら何歳であっても共感してもらえると思うんですが、服だけでなく肌や髪など、自分が納得できる状態でないとテンションが上がらないし、ずっとそんな日が続くと自己肯定力が下がるんですよ。
―たかがテンション、されどテンション!
FURUTA
子どもを授かるって、ものすごく幸せな経験です。でも生む前はいろいろ不安な気持ちになることも多いし、生まれた後の母親業って、24時間フルタイムの激務。我が子可愛さ半面、自分のボロボロ具合に、こんな状態で世の中のペースに戻っていけるのかなとか……、取り残されているようで無性に悲しい気分になってしまうときもある。そんな状況で、絶対人には見られたくない格好をしているなんて、もう気持ちがLOWになって当たり前ですよね。
―スーツや制服を着るとその職業の“スイッチ”が入るのと同じく、母親業もモチベーションがあがる仕事着が必要と思ったわけですね。
FURUTA
そうですね。母親になった瞬間に与えられる役割って「世界でもっとも至福なしごと」だと思うんです。その始まりである妊娠・出産は女性の人生における大きなイベント。我慢と不安でいっぱいにするより、自分らしく楽しんで特別なものにしたかった。私以外の多くの女性も、そうありたいに違いない。だからスタイリストの自分だからできることとして、入院時や産後の乳児と過ごす新しい暮らしを、おしゃれに彩るマタニティウェアを作りたいと思ったんです。
世界でもっとも至福なしごと着
―これが「世界でもっとも至福なしごと着」を作るブランドgreenomeの誕生ですね。
FURUTA
ブランドが具現化したのは、いい素材との出会いがあったからです。3層ガーゼ構造になっていて、妊娠中に肌質が変化する妊婦の方や、敏感な赤ちゃんの肌にも安心して使えるんです。すごく軽くて優しい触り心地で、素材へのこだわりもしっかりしているから、肌トラブルに悩まされた経験がある私にとって、まさに求めていた生地でした。絶対に同じ思いを抱えている人達がたくさんいると確信していたので、これを使って作りたいマタニティパジャマが頭に浮かんで……、よし(ブランドを)始めるか、と。
―デビューコレクションになったこのパジャマ、編集部でも愛用しているママもいますし、私もミューズモデルやスタイリスト、ライターさんまで、知人への妊娠・出産祝いのギフトとしてプレゼントしまくっています。みんな受け取ってすぐにお礼を言ってくれるだけじゃなく、そのあと使い始めてから「これ、本当にいいんだけど」って報告をくれる。だから、また他の人にもあげたくなるんですよね。
FURUTA
ありがたいです。実際、福岡市の産婦人科、福岡バースクリニックさんでは、入院時のパジャマとして使用してくださっていたりして。たくさんの妊婦さんたちが少しでも快適に、気分をあげて出産できる手伝いができているかと思うと、嬉しいです。
愛される定番をしっかり作り続けるのが目標
―素材はサスティナビリティの面でもこだわっているんですよね?
FURUTA
愛する子どもたちの将来を想うときに、地球環境を考えない商品を生み出すブランドにはしたくなかった。だからgreenomeの商品の素材は主にオーガニックコットン、ベターコットン、サスティナブルコットン及びエコ素材を使用しています。フェアトレードを重視して、製法・販売方法にもこだわっていますし、リユースにももっと力を入れていきたい。過剰生産をしたくないので、シーズンごとに新作をバンバン出すのではなく、愛される定番をしっかり作り続けるのが目標です。
―greenomeは納得のいく素材に出会わないと新作が登場しないという噂は業界で有名です(笑)。
FURUTA
あ……(笑)! でも、2周年のタイミングで、新素材カポックを使ったラウンジウェアが登場してるんです。このカポックって東南アジアに自生する植物で、その実から作られる綿は一般的な綿の1/8の軽さ&吸湿発熱機能があるんです。つまり寒いときは湿気を吸って暖かく発熱して、暑いときは湿気を放出して涼しいから快適! 救命胴衣などでも使用されているんですが、木の実だから森林伐採しないで作れる(とまらない説明)……。
―みなさん、詳しい説明はぜひオフィシャルサイトでご覧になってください(笑)。今回はマタニティに特化していないパジャマに仕上がっていると聞きました。
FURUTA
デビュー時から「普通のパジャマも作って!」というリクエストが多かったので、おしゃれな女性たちに納得してもらえて、快適で気分があがるものを、と作った新作です。たっぷり生地を使ったゆとりのあるAラインシルエットなので、妊婦さんにも着られますし、着脱しやすいスナップボタンは、片手で外しやすく授乳にも便利なので産後ママにもオススメです。
―このプリントの名前、“yozora no kioku"っていうんですね。素敵です。
FURUTA
プリントの名前はデビューからずっと、娘の言葉をベースにしてつけています。チェック柄は“amiami”、淡いブルーには“5ji no sora" 、ドット柄は“shabon dama" とか、どれも大人にはちょっと出てこない感性で、毎回ハッとさせられています。
―娘ちゃんのセンス、最高ですよ! これからも楽しみにしてますね。
古田千晶さんプロフィール
スタイリスト・greenomeディレクター/1983年生まれ。ファッション誌や広告を中心に、アパレルやウエディングブランドのディレクションを手掛けるなど多岐で活躍。37歳のときにマタニティライフスタイルブランドgreenome(グリーノーム)を立ち上げる。私生活では2度の出産を経て、8歳の娘と3歳の息子の母。
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