軽井沢に移住して3年。「大きな窓に一目惚れ」Chaosディレクター・櫛部美佐子の一軒家を拝見
リモートワークの普及で働き方や働く場所がフレキシブルになった昨今、東京を離れて地方に移住する人も。それぞれの土地で新たな生活をしている人たちの暮らしについて取材しました。二人目は軽井沢に移住して3年になる、Chaosディレクター・櫛部美佐子さん。
Living
木の温もりと光に包まれた
センスあふれる暖かな部屋
Entrance
新緑が美しい森の中、未舗装の道を進むと現れる可愛らしい一軒家。近所の建物のほとんどが別荘だそうで、聞こえてくるのは鳥のさえずりと葉ずれだけという静かな環境。愛犬のりんごくんが元気よく出迎えてくれた玄関扉の先には、天高のある開放的なリビングが広がる。「この吹き抜けと大きな窓に一目惚れしたんです」と櫛部さん。3年前にネットで見つけたこちらの賃貸物件、翌日には内覧、その週末には契約と、トントン拍子に移住計画が進むことに。
そもそも櫛部さんが軽井沢に移住しようと思ったきっかけは?「小さいころから転勤族で引っ越しに抵抗がないんです。東京で忙しくしていて、ちょっとゆっくり生活したいなと思い始めて。軽井沢は東京へも新幹線で1時間とアクセスもよく、自然に囲まれながらも適度に栄えていて便利で住みやすそうだなと。軽井沢で一戸建ての賃貸って少ないのですが、そんな貴重な物件が借りられたころにリモートワークも始まり、タイミングがよかった」
それでも住めるようになるまでの準備は相当なものだったよう。「借りたはいいけど、何年も人が住んでいない築40年の家はあちこちボロボロで庭も草だらけ。草むしりに始まり、ウッドデッキのリフォームや大掃除などを経て、住めるようになったのは契約から約2カ月後」
リビングで圧倒的な存在感を放つ一枚板のローテーブルを中心に、センスあふれる器や観葉植物、旅で集めた多国籍なオブジェやアートなどに囲まれた空間は、まさに櫛部ワールド。どこかカオスの洋服や店舗内装にも通ずる、モダンさと有機的なムードがミックスされた心地のよい空間を作り出している。
Work Space
Garden
「この家、夏の別荘用に建てられてるから窓が1枚ガラスなんです。今は快適ですが冬は本当に寒くて。去年の大寒波のときは、家の中もマイナス5℃とかになっちゃって。冬は薪ストーブと石油ストーブのダブル使いで乗り切っています。大好きなお酒や美味しい食事を外でするにも車で出かけないといけないなど不便も多いですが、それでも毎日澄んだ空気を吸ったり、木々の香りを感じたり、庭で摘んだハーブでお茶を淹れたりできるのは、私にとってかけがえのないこと。東京も好きだけど、もう都心に住むことはないかも。次引っ越す機会があれば、今度は海の近くに住みたい」と櫛部さん。ずっと住み続けたくなるような心地よい家だけれど、行動力のある彼女なら、そんな日が来ることもそう遠くはないかもしれない。
次回はBYOKAデザイナー・松田陽子さんの軽井沢の自宅をご紹介します。お楽しみに!
photograph:TAIJUN HIRAMOTO / illustration:MIO YOSHIDA
otona MUSE 2023年8月号より