7月号のカバーミューズ
「アイラブハプニング、アイラブ瞬間!」
満島ひかりさんインタビュー
冒険してハッピーな気持ちで心動く、
惹かれるほうに進みたい
オトナミューズ7月号の表紙を飾ってくれた満島ひかりさんのインタビューをお届け。彼女の言葉選びは本当に面白い!
アイラブハプニング、アイラブ瞬間(笑)。
日々を面白がっていたいです
―今回“どうかしてるTシャツ”というテーマでしたが、いかがでしたか?
「デザインを遊んでいる服も、ひとクセあるスタイリングも好きだし、Tシャツというのもあって気楽な撮影でした(笑)。スタイリストの小嶋智子さんがリメイクしてくれたフリンジのTシャツが印象的で。ピンタレストで切り方を見つけてハサミを入れたって話してましたけど、まさに“どうかしてる”ってテーマにぴったりでしたね。のれんのようなカット(笑)だけど、袖を通してみたらサイドがちょっとエレガントに広がって可愛かったです。着心地もよくて意外におしゃれで」
―ルールやセオリーにとらわれ過ぎず、突発的な衝動やワクワクする高揚感を大切にしながらファッションを楽しもうよ、という思いも込めた企画でした。
「なるほど、素敵ですね。私自身、アイラブハプニング、アイラブ瞬間、で生きてるところもあるので(笑)。予測どおりや順当な流れもホッとするけど、不測の事態とか予想外な展開をその都度面白がって対応していると、キュンとする発見に出会えることがあったりして。物事の、裏のそのまた裏をめくってちょっと興奮、とか。よくしてる気がします(笑)」
―ひと筋縄ではいかない感じですね。ご自身のこと、どう捉えていますか?
「ある部分はパンクで、ある部分はほっこりで。母性強めのお姉さん気質だけど、1匹狼なところもあるかな。あとは、ビビりのくせに超大胆……シンプルなのに複雑で、分かりにくい人です(笑)。遊ぶときやお仕事中、プレイヤーでいるときは、頭を使うより反応を大切にしていて。生きている中での多くの時間を頭使わなくていいようにしているぶん(笑)、どうしても考えなきゃいけないことにぶつかったときは、凄まじく集中して考えます。そのときの集中力は半端じゃないはず。あ、でも家とかいつもキレイです……意外ですか?」
―いえ、そんなことは(笑)。天真爛漫とか掴みどころがないとか、そんなイメージを持っている人は多い気がします。
「天真爛漫とはまた違うのかもしれません。気ぃ使いだし。ただ楽しくて笑える感じも好きだけど、静かな時間も大好きです。子どものころから働いているからか、お仕事よりもちょっと、家のことをメインにしたほうが自分が楽ですね」
―オンエア中のドラマ『未来への10カウント』では、真面目でまっすぐな気質の古文教諭を演じられていますね。
「今作で演じている折原葵さん、とってもいい性格の人なんですよ。みんなが気づかないまま通り過ぎていくことを感じられて、存在の明るさで場を明るくできて。“マインドフルネス”だし、これもいい時間だよね~って朗らかに視点を変えていけるような面白さがある。それに、古文のワビサビじゃないですけど、人を想う、思いやることのできる女性なんです」
―満島さんのお芝居で、さらに魅力的な女性像になっている感じがします。
「それは嬉しいです。福田靖さんの脚本の、セリフの掛け合いによる会話劇が印象的で。私はそれを文字の下からも上からも、しつこく眺めてみています(笑)。なんていうか、福田さんご自身さえも気づいていない、物語の新たな一面を発見することができたらいいなと」
―オトナミューズとしては葵のアイコニックな衣装も気になるところです。
「シャツにベストを重ねて、ウエストインして下はミドル丈のスカートっていう、アレですね? 注目していただき嬉しいです。葵さんのきちんとして、ちょっと変わっている部分が際立つように、アイテムの組み合わせやシルエットは基本固定にしたんです。いわゆる昔ながらの先生っぽい雰囲気もありつつ、ベストが若干オーバーサイズで肩が落ちてたりとか細かいこだわりもあって、密かな楽しみです」
―木村拓哉さんとの本格的な共演もかなり話題になっていますよね。
「木村さんはもう、波動が直にバンバンくるんですよ。こんなにエネルギーの強い方と同じドラマで、楽しくセッションできるなんて! と、もちろん興奮もしておりますが、せっかくなら木村さんが打たれたことのないところを打ちたい! って思いも(笑)」
―満島さんらしさが全開しているわけですね(笑)。ますます今後の展開が楽しみでなりません。
「ドラマ自体はボクシングという題材がメインのフィジカルな話ですが。私としてはそのなかにちょこっとスキマを見つけて、折原葵さんを通して人生の面白がり方みたいなものも伝えられたらいいのかなって。そう思えるのも、木村さんが懐広く対応してくれるからこそ。ひとつ外してみるとこっち側にも回れるよ、みたいな衝動的な感覚も挟みながら、役者の皆さんの個性や味が出た、温度のある作品になれば、と思います」
まだ正解は出したくない。
未知の何かを得るために
“空(くう)”を打ち続けていたい
―ちなみに、座右の銘や好きな言葉ってありますか?
「“宝のもちぐされ、最強”(笑)。いつも頭の中に置いているんです。社会に作られたというか、あてがわれた才能の使い方みたいなものに惑わされたくなくて。人を職業や肩書きで見過ぎるのも苦手です。ランクとか上とか下とか、そういう物差しを持たずに、いろんな立ち位置に自分を冒険させられたら素敵だなって。選択のタイミングでは、素直に面白いと思えるほうを選べる自分でいたいし。あと、ヒマとかムダな時間から貰ったギフトって、実はいっぱいあって」
―40歳を見据えて、今後のビジョンのようなものがあれば伺わせてください。
「40歳になったときに、今とまったく違う生活をしてる可能性も大いにある。そんな心持ちです(笑)。想像もしないような場所にいたいっていう願望があるのかもしれません。先輩に、“ひかりちゃんって毎回、今が最後の作品って思ってるでしょ”と言われたことがあって、あーそうかもしれないなって」
―毎回そういう意識でお芝居をされているんですか?
「これが最後になっても悔いがないように、とはいつも思っているかな。お芝居に対しては、ずっと変わらず恋をしているんでしょうね。本番中に、ある一定のゾーンに入ると無敵になるんです。銃でめちゃめちゃ撃たれてても弾がひとつも当たらないぞ、ってくらいに(笑)。それと同時に、世界一の幸せものかってくらいに、愛に満ちてる感じがして、切なくて温かい気持ちだし、哀しいし嬉しいしで、最終的にレム睡眠のような状態に着地してしまいます(笑)」
―いちファンとしては、ずっと満島さんのお芝居を観ていたいです。
「とても嬉しいです。お芝居で作品に関わることはとても好きなので、続けられたらいいなと思っています。ただ、他のことに具体的に興味を持ち始めている自分もいて。子どものころ、本をたくさん読んでいたんですけど、難しく読んでいた本が、あるとき急に水のように自分の中に入ってくる感覚が心地よくて。それと同じように、どんな環境に身を置いても“空(くう)”を打ち続けて未知の何かを得ることを、これからもゆったり続けていければいいなって」
profile_満島ひかり(みつしま・ひかり)
1985年、沖縄市出身。観る人の心をとらえる唯一無二の存在感で、数々の映画賞・演技賞の受賞歴を持つ。温かさと力強さのある声で、音楽活動や朗読、声の出演でも話題に。現在、テレビ朝日『未来への10カウント』にヒロインの折原葵役で出演中。
photo:YUTO KUDO / styling:TOMOKO KOJIMA / hair:KEIKO TADA[mod’s hair] / make-up:YUMI ENDO[eight peace] / interview:NAO MANITA[BIEI] / model:HIKARI MITSUSHIMA