中村アン37歳インタビュー「壁にぶち当たるのが好き。今はたぶん人生で一番、自分について考えている」
INTERVIEW ANNE NAKAMURA
ここからは、中村アンさんのインタビューをお届けします。
ミューズ世代ど真ん中、37歳の彼女の心やからだの変化について、そして仕事への向き合い方について、率直に語っていただきました。
ゆっくりと過ごす時間の中で新しい自分と出会いたい
30代半ばを過ぎてみると、心やからだに日々訪れる変化は緩やかに見えても、実際には鋭かったりもする。中村アンさんも転換期を迎えているひとりであり、仕事への向き合い方に始まり、ファッションにも如実に変化が表れて、断捨離を重ねるようになったそう。
「好きだったものが年齢を重ねるにつれて少しずつバランスをとるのが難しくなってきた実感があります。ここ数年は、30歳くらいのときに着ていた服がなんとなくしっくりこない、同時に似合わなかったものが似合うようにもなってきて、クローゼットを少しずつ入れ替え中です。“手放すのはもったいない”という物差しでは、選ぶ精度が鈍るので、執着はせずに。体形も少なからず変化しているから、ファッションも新陳代謝させていきたいですね」
スポーティなものがちょっと難しく感じていた、と中村さん。今回のスタイリングが攻略のヒントになったようで。
「例えば、ざっくりとしたトレンチコートにスニーカー、そこに赤い靴下。ちょっと大人の遊び心をきかせるのが自分的には新たな発見。ほんのりとした色っぽさがマッチしていて素敵。春になると私もトレンチコートを着たくなります。ただ、持っているのに登場回数でいえば少なくて、ジャケットやレザーのライダースだったり、丈が短いものがどうしても気軽で手に取ってしまう。でも、トレンチを着るとドラマチックな気分になれるというか、羽織るだけで雰囲気が味わえる。そういうのも込みで楽しみたい。積極的に着ていかないともったいないし」
最近は同系色のアイテムをレイヤードして着ることにハマっていて、そのキーアイテムとなるのがインティミッシミのインナー。
「ウルトラライトカシミヤシリーズのロンTインナーを6枚ぐらい色違いで買って、これがめっちゃ気持ちいいんです。インナーとしては安いものではないけれど、すごくいいので、会う人みんなにオススメしてます。他にもピエール マントゥーのソックスだったり、イタリアづいてますね(笑)」
断捨離がきっかけで、好きの密度が高まり、持っているものへの愛着も強くなった。
「何か買うときも、本当に欲しいと思ったら買う、迷ったらやめよう。そのくらいシンプルになりました。昔は迷ってもいつかは着るだろうと購入したけれど、経験上やっぱり着ないんですよね。靴を買っても、そんなにはく機会がないし。今は、手元に何があるのか把握できるくらいの物量が心地いいですし、新しいものを手に入れるなら、まずは一度すっきりさせて余白を作ってから。そうすると自分が何を好きかがクリアになってきたし、再確認できるようになりました。バッグにしても、クタクタしていい味が出た状態が好きで、わざわざ風や雨に当てたりするんです。ザ・ロウのマルゴーも、初期のアイテムなので現行のものより重くて硬い、でも私としては一番かっこよく見える。8年くらいかけて、やっと全体がこなれてきて、自分のスタイルにフィットするようになりました」
端から見ると、いつも活発で忙しそうなイメージがあった。ところが今は、立ち止まって、自分にフォーカスして、見つめ直す時間が増えてきた。これは、また少し変われるチャンスかもしれない、そんな予感もある。
「確かに(笑)。振り返ると常に動いていて、立ち止まっていなかったですよね。休みがあったとしても、ハードにトレーニングをしたり、何かしら動いているほうが好きだったし、それが落ち着くみたいなところもあって。今はたぶん、人生で一番、自分について考えているし、ゆっくりできる時間が増えました。楽しいし、心地がいいけれど、攻めの姿勢を忘れそうになってしまうときも年齢とともにちょっとあります。若さだけの勢いって確実にあって、しみじみとこれが丸くなるということなのかと感じながら。それでも、いざというときは『えい!』と飛び込む気持ちを忘れずにいたいですね」
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interview & text:HAZUKI NAGAMINE
photograph:ITTETSU MATSUOKA styling:KEITA IZUKA hair & make-up:AIKO TOKASHIKI model:ANNE NAKAMURA
EDITOR
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