「手でしかできないことを突き詰めたい」
29歳の注目刺繍作家•デザイナーが語る
ブランド「tanakadaisuke」への想い
Velnica.デザイナーの小林加奈さんが、未来に繋ぎたい日本のクリエイティブに注目し、今活躍するクリエイターたちを紹介する「Lady Holistic」。
今回ご紹介するのは
刺繍作家・デザイナー田中大資さん
どんなサイズの刺繍にも
果てしないロマンが詰まっている
2021年秋冬コレクションで本格デビューし、繊細な刺繍や装飾的な技法を武器に幻想的なコレクションを展開している「タナカ ダイスケ(tanakadaisuke)」。アーティストやCMの衣装のリクエストも多く、コロナ禍の中で発売したサクランボの刺繍のマスクやトートバッグが大ヒット! するなど、ブランドデビュー前から私も彼の刺繍ファンのひとり。今回、メンズも加わった新たなコレクションを楽しみに、お話を伺ってきました。
「刺繍はどこまでのひとりの濃密な時間。僕は独学で追求してきたので、あまり基本に縛られない独自の組み合わせ方を大切にしたいと思っていて。機械刺繍のレベルもどんどん高くなっている今、手でしかできないことを突き詰めていきたいなと思っています。今回のコレクションで表現したかったのは、社会性を身につけると共に薄れてきてしまった、誰もが幼いときに見ていたファンタジーの世界を呼び覚ますような、純粋ロマンの世界。非日常の世界を着たときの高揚感や、輝きを纏う瞬間に立ち会うことができる自分でいたいと思っています」
弱冠29歳。昨年ブランドをスタートさせるまでに感じてきた強い思いとは?
「感度の高い若いうちに一線を走って勝負していきたいとずっと思っていたんです。独立して最初となる作品が完成したら、インスタグラムを開設して個人の作家活動を始めよう! と思っていた中、取りかかった作品に半年もかかってしまって。でもその生みの苦しみの中で成長できたことはとても大きかった。自分が気になるクリエイターの方やスタイリストの方たちと仕事をするには、自分がまず唯一無二な存在にならないといけない。そう思ったら、作品に向き合う孤独な時間も全く苦にならないですね。
今回、ウィメンズの他にメンズをだいぶ増やしたんですが、今の世の中にはメンズにも着飾る物が必要とされていると感じていて。メンズの世界を刺繍と結び付けて、煌びやかな日常の商品として、ひとつハードルを上げてトライしていけたらいいな、と。女性にも男性にも着飾る楽しさを発見できるようなファンタジー性のある服を提案していきたいと思っています」
Velnica.デザイナー小林加奈
1975年生まれ。てんびん座。B型Rh-。著書『リトル アトリエ ヴェルニカ』が発売中。
text:Kana Kobayashi(Velnica.)